Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
循環器 その他

(S633)

高齢の健康診断受診者における心臓超音波検査の役割

Impact of echocardiography in health checkup in the elderly population

長谷川 拓也, 坂本 真里, 濱谷 康弘, 岡田 厚, 天木 誠, 高濱 博幸, 菅野 康夫, 神﨑 秀明, 安田 聡, 北風 政史

Takuya HASEGAWA, Mari SAKAMOTO, Yasuhiro HAMATANI, Atsushi OKADA, Makoto AMAKI, Hiroyuki TAKAHAMA, Yasuo SUGANO, Hideaki KANZAKI, Satoshi YASUDA, Masafumi KITAKAZE

国立循環器病研究センター心臓血管内科心不全科

Cardiovascular Medicine, National Cerebral and Cardiovascular Center

キーワード :

【背景と目的】
加齢に伴い心疾患の発症率は高くなり,高齢女性は左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)のリスク因子とされている.心臓超音波検査により様々な心疾患の非侵襲的なスクリーニングが可能であるが,健康診断のように短時間で多数の検査を行うことは難しく通常は行われていない.我々は佐賀県有田町の健康診断において心臓超音波検査を行い,心疾患のスクリーニングを行った.
【対象と方法】
2005年から2008年の4年間の佐賀県有田町健康診断受診者のうち,1604人に対して心エコー検査を行った(年齢62+/-13歳,男性 600人,女性1004人).このうち65歳以上の高齢者812人(71+/-5歳,男性 322人,女性490人)の心臓超音波検査結果について検討した.
【結果】
高齢者の受診者において,虚血性心疾患疑い(左室局所壁運動異常)9人(0.6%),肥大型心筋症疑い2人(0.2%),左室収縮機能障害(LVFS <29%)38人(4.7%),中等度以上の弁膜症19人(1.2%),その他中等度の心囊液貯留1人,先天性心疾患4人(ASD, PDA,冠動脈瘻など),左房内腫瘤1人を認めた.このような精査加療,あるいは定期的な経過観察が必要な疾患の罹患率は,非高齢者(64歳以下)に比し,高齢者(65歳以上)群で高かった(4.7%,8.0%, p=0.006).また非高血圧群に比し高血圧群では罹患率が高かった(4.8%,9.6%, p=0.017).BNPはこのような疾患の罹患群を抽出に有用であり(AUC 0.634(95%CI 0.556-0.712, p<0.001),31.4pg/mlをカットオフとすると,感度60%,特異度58%,陽性的中率 11%, 陰性的中率 94%であった.また上記の心疾患を有さない受診者578人において38%に左室肥大(左室心筋重量増加)を認めたが,左室肥大を有する者の抽出にBNPは有用ではなかった(AUC 0.526(95%CI 0.475-0.578), p=0.317).
【結論】
高齢者の健康診断における心エコー検査により,循環器専門医による介入が必要となる疾患を8%の割合で認めた.心エコー検査を受ける方のスクリーニング法としてBNPがある程度有用であると考えられた.