Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
右心

(S632)

肺高血圧症患者における右心機能保持のための血行動態指標とは?

Which hemodynamic factors are associated with preserved right ventricular function in pulmonary hypertension?

本間 仁乃, 大門 雅夫, 川田 貴之, 木村 公一, 中尾 倫子, 廣川 愛美, 岡橋 典子, 青木 和浩, 渡辺 昌文, 小室 一成

Hirono HOMMA, Masao DAIMON, Takayuki KAWATA, Koichi KIMURA, Tomoko NAKAO, Megumi HIROKAWA, Noriko OKAHASHI, Kazuhiro AOKI, Masafumi WATANABE, Issei KOMURO

1国立病院機構東京病院循環器内科, 2東京大学附属病院循環器内科, 3山形大学医学部内科学第一講座(循環・呼吸・腎臓内科学)

1Division of Cardiology, NHO Tokyo hospital, 2Division of Cardiology, University of Tokyo hospital, 3Division of Cardiology, University of Yamagata hospital

キーワード :

【背景】
近年,肺高血圧症においては,肺高血圧の重症度のみならず,右心機能低下が独立して重要な予後規定因子であることが知られるようになった.しかし,右心機能低下に至る血行動態指標のカットオフ値は明らかでない.
【目的】
肺高血圧症患者において,右心機能低下に至る臨床的・血行動態的因子を明らかにし,肺高血圧治療における右心機能保持のための治療目標値確立の一助とすること.
【対象】
肺高血圧症が疑われ,右心カテーテル検査および同時期に心エコー図検査を施行した連続89症例(平均年齢57±15歳,男性32症例)を対象とした.89症例中46例(52%)が肺高血圧臨床分類Ⅰ群(肺動脈性肺高血圧症),21症例(24%)がⅢ群(肺疾患および/または低酸素血症に伴う肺高血圧症),19症例(21%)がⅣ群(慢性血栓塞栓性肺高血圧症),3症例(3%)が分類不明であった.
【方法】
全症例における臨床的因子,右心カテーテル検査結果,心エコー図検査結果を後ろ向きに検討し,右心機能低下(右室面積変化率<35%)と有意に関連する因子を検討した.
【結果】
47症例(64%)において右心機能低下を認めた.右心機能低下群と保持群では,年齢,性別,BMI,症状,疾患群および治療薬での有意差は認めなかった.右心機能低下群では保持群と比較して,肺血管抵抗(pulmonary vascular resistance: PVR)および収縮期肺動脈圧/収縮期血圧(systolic pulmonary arterial pressure/systolic blood pressure: sPAP/sBP)が有意に高かった(P<0.01).多変量解析を行った結果,PVR(Odds ratio:OR 1.04, P=0.002)およびsPAP/sBP(OR 1.056, P<0.001)は独立した右心機能低下予測因子であった.なお,PVRのカットオフ値を490.5 dyne・sec/cm5としたときの感度は71%,特異度は74%であり,ROC曲線下面積は0.74(P=0.001)であった.sPAP/sBPのカットオフ値を0.295としたときの感度は66%,特異度は72%であり,ROC曲線下面積は0.73(P<0.001)であった.
【考察】
肺高血圧症患者において,PVRおよびsPAP/sBPは独立した右心機能低下予測因子であり,肺高血圧治療を行っていくうえで,PVRは490.5 dyne・sec/cm5およびsPAP/sBPは0.295を目標値として治療をすることで右心機能は保持され,予後改善につながる可能性が示唆された.
【結論】
肺高血圧症患者においてPVRおよびsPAP/sBPは右心機能低下を予測する因子になり,診断指標および治療上の目標値として有用となりうることが示唆された.