Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
腫瘍 その他 2

(S629)

左室心尖部血栓の2症例

Two cases of left ventricular apical thrombus

古川 敦子, 福岡 陽子, 尾原 義和, 細木 信吾, 山本 克人

Atsuko FURUKAWA, Yoko FUKUOKA, Yoshikazu OHARA, Shingo HOSOGI, Katsuhito YAMAMOTO

高知医療センター循環器内科

Department of Cardiology, Kochi Health Sciences Center

キーワード :

症例1は70歳男性.5日前からの胸部絞扼感を主訴に来院し,受診時は心電図上前胸部誘導のR波増高不良を伴う頻脈性心房細動であった.心エコー図検査では左室壁運動は頻脈のためびまん性に軽度低下し,加えてapical capのごく狭い範囲に限局した菲薄化を伴う無収縮が認められた.同部位に一致して12×11 mmのやや高輝度でわずかに可動性を伴う異常構造物があり,心尖部血栓が疑われた.抗凝固薬投与と薬物的心不全治療を開始し,準緊急的に外科的摘除術を予定していたが,入院翌日に多発脳梗塞を発症し,緊急手術となった.術前冠動脈造影では左前下行枝#7 90%の高度狭窄が認められた.術中所見では左室心尖部に2個の血栓塊と周囲の乳頭筋間に散在性の小血栓があり,左室血栓除去術と冠動脈バイパス術を行った.
症例2は45歳男性.11日前に腹痛と嘔吐下痢を主訴に近医を受診し,AST, ALTの上昇とCKの著明高値を指摘された.消化器疾患の精査では明らかな原因は指摘されず,スクリーニング目的で施行された心エコー図検査で左室内異常影を指摘され紹介された.12誘導心電図は洞調律でⅡⅢaVFと左側胸部誘導の陰性T波があり,心エコー図検査にて心尖部に20×26 mmの高輝度で可動性を伴う大型の球状異常構造物が認められた.形態上は器質化血栓様であったが,左室収縮能は正常下限で局所壁運動異常はなかった.冠動脈造影では有意狭窄はなかった.塞栓症発症のリスクが高いと判断して緊急手術の方針とし,左室心尖部血栓除去術を施行した.
左室局所壁運動異常がないもしくはごく限局した局所壁運動異常で左室心尖部血栓を生じた2症例を経験した.