Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
腫瘍 その他 2

(S628)

造影CTで検出されず経胸壁心臓超音波検査で診断しえた特異な形状のバルサルバ洞動脈瘤

A case of unique aneurysm of valsalva sinus diagnosed by ultrasoud cardiography, that cannot be detected by contrast-enhanced CT angiography

上野 耕嗣, 川久保 裕美子, 須藤 究, 三浦 陽平, 西田 裕明, 八島 史明, 森 健支, 横田 裕之, 下地 顕一郎, 野間 重孝

Koji UENO, Yumiko KAWAKUBO, Kiwamu SUDO, Yohei MIURA, Hiroaki NISHIDA, Fumiaki YASHIMA, Takeshi MORI, Hiroyuki YOKOTA, Kenichiro SHIMOJI, Shigetaka NOMA

済生会宇都宮病院循環器内科

Department of Cardiology, Saiseikai Utsunomiya Hospital

キーワード :

【患者】
65歳,男性
【病歴,経過】
定期通院歴のない患者であった.2015年9月にST上昇型前壁中隔梗塞を発症し搬送された.救急外来で施行した経胸壁心臓超音波検査で,前壁中隔から心尖部の壁運動異常と右バルサルバ洞動脈瘤を認めた.動脈瘤は未破裂で大動脈弁閉鎖不全は軽度であり,緊急冠動脈造影を行った.左前下行枝近位部に完全閉塞を認め血行再建を行った.第10病日にバルサルバ洞動脈瘤の精査目的に大動脈造影CTを施行したが,バルサルバ洞の拡大や瘤を検出できなかった.再検した経胸壁心臓超音波検査では右バルサルバ洞動脈瘤は明らかであったが,瘤は右バルサルバ洞の一部から派生し,右室内に突出しているように観察された.心電図同期で造影剤が右室を抜けた時相でCTを撮像すると,右バルサルバ洞底部から右室内に径25mm,高さ15mm大の分葉状で先端にブレブ様の構造を有する動脈瘤が明瞭に描出された.右バルサルバ洞全体の拡大は目立たず,大動脈弁閉鎖不全も軽度であるが,動脈瘤の形状から破裂の可能性があると考え手術を勧めたが希望されなかった.以後,約2年間経胸壁心臓超音波検査,心電図同期造影CTでフォローアップしているが,明らかな増大を認めずに経過している.
【考察】
バルサルバ動脈瘤の診断は造影CTが主流となっているが,右バルサルバ洞動脈瘤では瘤が右室側へ突出するため,通常の大動脈造影CTでは検出できないことがある.本症例では経胸壁心臓超音波検査が右バルサルバ洞動脈瘤を明瞭に描出し,瘤の存在診断に有用であった.また心臓超音波検査は大動脈弁の機能評価にも高い有用性を示す.ただし瘤の全体像や詳細な形状の評価は困難であり,質的診断には心電図同期造影CTが有効であった.
【結論】
経胸壁心臓超音波検査が診断に有用であった右バルサルバ洞動脈瘤の一例を経験した.バルサルバ動脈瘤の評価において心臓超音波検査と造影CT検査は相補的な役割を果たすため,両者の特性を理解して診療に活かすことが肝要であると考えられた.