下村 泰史, 繼 敏光, 遠藤 仁, 鶴田 ひかる, 板橋 裕史, 村田 光繁, 上野 万里, 山崎 真敬, 福田 恵一, 三田村 秀雄

Taishi SHIMOMURA, Toshimitsu TSUGU, Jin ENDO, Hikaru TSURUTA, Yuji ITABASHI, Mitsushige MURATA, Mari UENO, Masataka YAMAZAKI, Keiichi FUKUDA, Hideo MITAMURA

¹立川病院初期臨床研修医, ²立川病院循環器内科, ³慶應義塾大学医学部循環器内科, ⁴慶應義塾大学医学部臨床検査医学, ⁵慶應義塾大学医学部病理学教室, ⁶慶應義塾大学医学部心臓血管外科

¹Resident Program, Department of Internal Medicine, Tachikawa Hospital, ²Department of Cardiology, Tachikawa Hospital, ³Department of Cardiology, School of Medicine, Keio University, ⁴Department of Laboratory Medicine, School of Medicine, Keio University, ⁵Department of Pathology, School of Medicine, Keio University, ⁶Department of Cardiovascular Surgery, School of Medicine, Keio University

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【はじめに】
乳頭状線維弾性腫papillary fibroelastoma（PFE）は稀な良性心臓腫瘍であり，多発するものは稀であり，PFEの6.8-7.5％と報告されている．われわれは大動脈弁左室側と大動脈側に付着する多発性PFEを経験した．
【症例報告】
70歳女性．副甲状腺腫瘍術前精査のため経胸壁心エコー図検査を施行し，大動脈弁（左室側と大動脈側）に付着する可動性に富むひも状の腫瘤を認めた．経食道心エコー図検査で大動脈弁無冠尖（NCC）左室側と右冠尖（RCC）大動脈側に10 × 2 mm，左冠尖（LCC）大動脈側に5 × 2 mm，NCC大動脈側に7 × 2 mmの辺縁不整で毛羽立ちのある腫瘤があり，PFEを疑った．右腋窩小切開による低侵襲心臓手術を施行し，大動脈弁腫瘤摘出術を施行した．左室側のRCCとNCCに4 mmの腫瘤，大動脈側のRCCに5 mm，LCCに7 mm，NCCに4 mmの腫瘤を認めた．病理所見は乳頭状線維弾性腫であった．
【考察】
原発性心臓腫瘍の発生頻度は剖検例の0.0017-0.28％であり，乳頭状線維弾性腫papillary fibroelastoma（PFE）はその7％と稀な良性疾患である．PFEの93％が単発性であり，多発性は稀である．これまでに報告された多発性PFEをPubMedで検討した．36例の報告があり，年齢は 55.6 ± 16.5 歳，男:女 17:20，大きさ 12.3 ± 6.3 mmであった．大動脈弁に付着したものは24例で，大動脈側 8例，左室側 4例，不明 12例であった．これまで，大動脈弁左室側と大動脈側に多発した報告はない．左室や左室流出路に付着したPFEは10 mm以上のものが多いが，弁尖に付着したPFEは10 mm未満のものがほとんどであった．多発性PFEは稀な疾患であるが，脳梗塞，心筋梗塞等の塞栓症の危険性もある．経胸壁心エコー図検査では単発性PFEと診断されても，経食道心エコー図検査で多発性PFEがみつかった報告もあり，術前に経食道心エコー図検査による慎重な精査が必要であると考える．