Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
腫瘍 その他 1

(S626)

左室粘液腫の発生により外科的治療を施行したCarney症候群の一例

A case of multiple left ventricular myxomas with Carney complex

城 好人, 橋本 修治, 水元 綾香, 米澤 理香, 柳 善樹, 濱谷 康弘, 神﨑 秀明, 小林 順二郎, 田中 教雄

Yoshito JO, Syuuji HASHIMOTO, Ayaka MIZUMOTO, Rika YONEZAWA, Yosiki YANAGI, Yasuhiro HAMATANI, Hideaki KANZAKI, Jyunjirou KOBAYASI, Norio TANAKA

1国立循環器病研究センター臨床検査部, 2国立循環器病研究センター心臓血管内科, 3国立循環器病研究センター心臓血管外科

1Clinical Laboratory, National Cerebral and Cardiovascular Center, 2Cardiovascular Medicine, National Cerebral and Cardiovascular Center, 3Cardiovascular Surgery, National Cerebral and Cardiovascular Center

キーワード :

【症例】
20歳台,女性.主訴はなし.
【現病歴】
10歳時に高身長を指摘され,マルファン症候群の疑いで当院紹介となり,年一回の経過観察を行っていた.16歳時に健忘症状があり,精査で施行した頭部MRIで下垂体腫瘍を指摘.成長ホルモン高値から下垂体巨人症の診断で他院にてHardy手術が施行された.その際の経胸壁心エコー図検査では異常なし.皮膚色素斑や,家族歴から遺伝子診断によりCarney複合の確定診断となった.今回,腹部・仙骨部の皮下腫瘤に対して切除術の予定をしていたが,術前の心エコー図検査にて左室腔内に腫瘤様エコー像を認めたため,精査加療の目的で当院入院となった.
【検査所見】
経胸壁心エコ-図検査および経食道心エコー図検査にて左室心尖部の前側壁側に有茎性で可動性は軽度あり,辺縁は整で内部性状が均一な20mm大の腫瘤様エコーを認め,内部はfeeding arteryと思われる拡張期優位の血流が観察された.心膜液は少量貯留を認めた.各弁機能に異常所見,大動脈径の拡大・解離等は認められず,左室径は,拡張末期径 50mm,左室収縮末期径 30mmで,%FS 49%,visual LVEF 65-70%であった.PET検査では,心筋また左室内に明らかなFDGの集積は認めなかった.
【入院後経過】
MRI検査より左室内腫瘤に関しては,粘液腫の可能性が示唆された.腫瘤は可動性を有していることから,塞栓症を発症する可能性が考慮されたため,早期手術の方針となった.
【病理所見】
左室内前側壁側から切り出された腫瘤は1つで,大きさは20mmほどであった.肉眼的に腫瘤表面は平滑で柔らかい広茎性であり,割面はゼラチン様で弾力性を認めた.断端は陰性であり粘液腫に矛盾しない所見であった.
【考察】
Carneyらの症例の家系調査によると,遺伝的素因があると考えられており,この症候群の心臓粘液腫を発症する患者の特徴としては,年齢が比較的若く(平均25歳)患者の半数は多発性の粘液腫を伴っており,単発性の腫瘍の頻度としては左房で41%と多く,右房は24%,心室には13%ほどあったとされている.また他の報告によれば,心臓粘液腫を切除後の再発率が高いというのも特徴であり,これに伴って塞栓症で死亡するリスクも高いといわれている.Carney症候群と診断された症例の心エコ-図検査では,心腔内のすべての部位において腫瘤の発生などがないかについて,入念に観察をする必要があると考えた.
【まとめ】
今回われわれは左室内粘液腫を伴ったCarney症候群の一例を経験した.