後藤 光, 梅津 華織, 小川 優, 山本 祐子, 林 真希, 木村 豊, 中村 文隆

Mitsuru GOTO, Kaori UMETSU, Masaru OGAWA, Yuko YAMAMOTO, Maki HAYASHI, Yutaka KIMURA, Fumitaka NAKAMURA

¹帝京大学ちば総合医療センター検査部, ²帝京大学ちば総合医療センター第三内科

¹Clinical laboratory, Teikyo University Chiba Medical Center, ²Third Department of Internal Medicine, Teikyo University Chiba Medical Center

キーワード :

【目的】
左房機能はreservoir機能，booster pump機能，conduit機能に大別される．左房strain波形においては，QRS波直後のpeak波形がreservoir機能，p波直後のpeak波形がbooster pump機能，その差がconduit機能を現すとされている．Heart failure with preserved ejection fractionが進行するに連れ，左房拡大も進行するが，Three dimensional speckle trackingを用いて左房機能を詳細に検討した報告は少ない．そこで今回，Three dimensional left atrial（3DLA）speckle trackingを用いて，左室拡張能をgrade別に比較検討したので報告する．
【対象】
2016年4月から11月にかけて当院検査室にて3DLA speckle trackingを記録し，中等度以上の弁膜症例と左室壁運動異常症例を除外した191例中，米国心エコー図学会（ASE）ガイドラインで判定困難の43例を除いた148例（平均年齢 62.4±15.9歳）
【方法】
使用機器 キャノンメディカルシステムズ社製APLIO ARTIDA（SSH-880CV），プローブPST-25SXを用いて3DLA speckle tracking（area tracking）を記録した．安定した記録を得る為に弁輪部，及び天井部を除外し左房中部6segmentのglobal strain波形からreservoir strain，booster pump strain，conduit strainを計測した．ASEガイドラインに沿って拡張能をgrade分類し，grade0（正常群 64例），grade1（弛緩障害群 74例），grade2～3（左房圧上昇群 10例）の3群に分類した．多群間比較はKruskal-Wallis検定（post-hoc解析 Steel-Dwass法）にて行い，危険率p＜0.05をもって統計学的有意差ありと判断した．
【結果】
reservoir strainは正常群（71.1±22.6％）と比較し，弛緩障害群（57.7±21.7％），左房圧上昇群（42.9±26.9％）とも有意に低値を示した．（正常群vs弛緩障害群 p＜0.05，正常群vs左房圧上昇群 p＜0.05）．booster pump strainは正常群（29.4±12.8％）と比較し弛緩障害群（30.6±18.02％）は有意差を認めず，左房圧上昇群（16.1±12.3％）では有意差を認めた．また弛緩障害群と比較し，左房圧上昇群で有意差を認めた（正常群vs左房圧上昇群 p＜0.05，弛緩障害群vs左房圧上昇群 p＜0.05）．conduit strainは正常群（41.6±12.8％）と比較して弛緩障害群（27.0±17.6％）で有意差を認め，左房圧上昇群（26.9±18.7％）では有意差を認めなかった．（正常群vs弛緩障害群 p＜0.05）
【考察】
reservoir strainは弛緩障害群，左房圧上昇群ともに低下した．booster pump strainは左房圧上昇群のみ低下した．このことから弛緩障害によりreservoir機能が先に低下し，さらに拡張能が低下し左房圧が上昇するとreservoir機能が低下するとともにbooster pump機能が低下すると考えられた．
【結論】
3DLA speckle trackingは左室拡張能評価において有用である可能性が示唆された．