Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
弁膜症 2

(S617)

三尖弁閉鎖不全症の弁輪形成術後における早期残存・遠隔期再発とresponder予測

Residual or Recurrence of Tricuspid Regurgitation After Tricuspid Annuloplasty

田中 純子, 國近 英樹, 赤川 英三, 小野 史朗, 角田 智枝, 栢田 優子, 村田 幸栄, 小林 俊郎, 郷良 秀典, 道重 博行

Jyunko TANAKA, Hideki KUNICHIKA, Eizo AKAGAWA, Shiro ONO, Tomoe KADOTA, Yuko KAYATA, Sachie MURATA, Toshiro KOBAYASHI, Hidenori GORA, Hiroyuki MICHISIGE

1済生会山口総合病院生理検査室, 2済生会山口総合病院循環器内科, 3済生会山口総合病院心臓外科, 4綜合病院山口赤十字病院循環器内科

1Physiology Laboratory, Saiseikai Yamaguchi General Hospital, 2Department of Cardiovascular Medicine, Saiseikai Yamaguchi General Hospital, 3Department o Surgery, Saiseikai Yamaguchi General Hospital, 4Cardiology Division, Yamaguchi Red Cross Hospital

キーワード :

【背景】
三尖弁輪形成術は多くの心臓弁膜症手術と同時あるいは単独に実施される.三尖弁閉鎖不全症(TR)の併存や弁輪形成術後の再発・残存は予後に大きく影響するため,遠隔期を含めた十分なフォローが必要である.しかし,術後とりわけ遠隔期におけるTRの再発に関わる因子は多岐に渡り,また形成術手技,人工弁輪の変遷,手術適応の変化により2011年以降の症例においてはさらに複雑化している.
【目的】
2011年以降に三尖弁輪形成術を実施した症例において,術後早期及び遠隔期のTR重症度を評価し,残存・再発に関連する因子を明らかにすること.
【方法】
当院心臓外科において2011年以降に三尖弁輪形成術を実施した連続102症例において,経胸壁心エコーによりTRを評価し,下記の三尖弁輪形成術に関連する指標を求めた.TR重症度,右房機能,右室機能及び推定右室圧,三尖弁輪部,下大静脈及び左心系項目.TR重症度はtrivial(+1),mild(+2),moderate(+3),severe(+4)とした.また心エコーを実施した時期は,①術前,②術後早期,③術後遠隔期の合計3期である.患者基礎情報に加えて,調律の変化,術前BNP値,生存率について検討した.尚,該当手術を実施した心臓外科医は同一のスタッフで行われている.
【結果】
遠隔期を含めた全ての時期をフォローできた症例は50/102例.心エコーを実施した時期は,①手術直前,②術後早期(15±7日),③術後遠隔期(30±19ヶ月)であった.機能性TRと器質性TRの割合は(45:5),術前の調率(sinus:AF=18:32),術前平均BNP値は530.9pg/ml.術直後にTRがmild以上残存したのは14/50例(28%),術直後のTR重症度より遠隔期に増悪したのは16/50例(32%)であった.TR重症度は,早期残存群:①3.0±1.0,②2.0±0.0,③2.0±0.8,遠隔期再発群:①3.0±1.0,②1.0±0.5,③3.0±0.6であった.TR早期残存群には術直後の右室面積変化率の有意な低下を認めた.TRが術後早期に残存し,遠隔期にも増悪したのは4/16例(25%)であった.
【考察】
過去の報告ではTRの残存に年齢,tethering height,術前TR重症度が関与し,またTRの遠隔期再発には術後早期のTR残存が影響を与えるとし,弁輪部主体の評価が重要視された.しかし,今回の検討では術後早期のTR残存には右室収縮機能の低下,また術後早期のTR残存例には遠隔期のTR増悪が少なく,TRの残存と再発とでは異なるメカニズムが存在すると考えられた.三尖弁輪形成術のresponder予測には周術期のTR重症度や三尖弁輪部の評価に加え,右室機能評価が重要であることが示唆された.