山野 倫代¹, 山野 哲弘¹, 三木 知紀¹, 溝部 祐希², 岡部 裕美², 大塚 明子², 加藤 ゆず子², 沼田 智³, 的場 聖明¹, 夜久 均³

Michiyo YAMANO¹, Tetsuhiro YAMANO¹, Tomonori MIKI¹, Yuuki MIZOBE², Hiromi OKABE², Akiko OTSUKA², Yuzuko KATO², Satoshi NUMATA³, Satoaki MATOBA¹, Hitoshi YAKU³

¹京都府立医科大学附属病院循環器内科, ²京都府立医科大学附属病院臨床検査部, ³京都府立医科大学附属病院心臓血管外科

¹Department of Cardiovascular Medicine, Graduate School of Medical Science, Kyoto Prefectural University of Medicine, ²Department of Clinical Investigation, Kyoto Prefectural University of Medicine, ³Department of Cardiovascular Surgery, Graduate School of Medical Science, Kyoto Prefectural University of Medicine

キーワード :

【背景】
三次元（3D）経食道心エコー図（TEE）は，器質的僧帽弁逆流（DMR）の逸脱弁尖を正確に評価するために今や必須である．一方，3D経胸壁（TTE）心エコー図は，TEEと比較して解像度やイメージングの質が劣ることから十分に用いられていない．
【目的】
DMRの複雑な逸脱弁尖を正確に診断することに関して，3D-TTEを2D-TTEに加えて実施することが，2D-TTEのみの診断に対してどのような付加価値があるのか明らかにすること．
【方法】
高度DMRで3D-TTEを含めて十分な術前評価を実施した症例のなかで，手術評価で単純な後尖middle scallop（P2）単独逸脱を除く9例（63±14歳，手術所見による逸脱弁尖：後尖2例，両尖1例，交連3例，前尖＋交連2例，後尖＋交連1例）に対し，2D-TTE, 3D-TTE, 3D-TEEを施行し，それぞれのイメージング法で指摘しえた病変部位と，手術所見に関して比較検討した．3D-TTEでは Multi-dimension法を用いて，カラードプラ法も併せて評価した．
【結果】
2例では全てのイメージング法で逸脱部位の診断が手術所見と一致していた（表, Case 3, 6）．2例（Case 2, 5）では，2D-TTEでは逸脱の有無が不明瞭だった弁尖に関して3D-TTEでは逸脱が無いと診断でき，その診断は手術所見と一致した．3例で，2D-TTEでは指摘できなかった逸脱弁尖を3D-TTEで診断できた．うち1例は3D-TEE，手術所見とも完全に合致していた（Case 4）が，前尖病変の範囲を正確に診断できなかった症例（Case 8）と，指摘しえた前交連逸脱に加えて存在した後交連逸脱の診断が困難だった症例（Case 9）があった．逸脱弁尖の術前診断と手術所見との完全一致率は2D-TTE: 3/9（33％），3D-TTE: 5/9（56％），3D-TEE: 6/9（67％）だった．
【結論】
DMRの複雑な逸脱病変評価に対して3D-TTEを追加で実施することで，2D-TTEでは描出，もしくは除外不可能な病変をTTEで正確に診断できる可能性がある．半侵襲的検査であるTEEは時に患者の忍容性等の問題で，詳細な評価に耐えうるイメージングが得られないことがある．特にそのような場合には，3D-TTEをTEEに先行して行うことで，より正確な逸脱弁尖の診断が可能になると考えられた．