Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
弁膜症 1

(S614)

重症大動脈弁狭窄症患者治療前後の心エコー図指標変化における治療手技による相違

Impacts of difference by procedure on change of echocardiographic parameters before and after treatment of patients with severe aortic stenosis

中元 麻友1, 田中 伸明1, 和田 靖明2, 國光 健太1, 佐々木 卓哉1, 奥田 真一3, 岡村 誉之3, 美甘 章仁4, 濱野 公一4, 矢野 雅文3

Mayu NAKAMOTO1, Nobuaki TANAKA1, Yasuaki WADA2, Kenta KUNIMITSU1, Takuya SASAKI1, Shinichi OKUDA3, Takayuki OKAMURA3, Akihito MIKAMO4, Kimikazu HAMANO4, Masafumi YANO3

1山口大学大学院医学系研究科病態検査学, 2山口大学医学部附属病院検査部, 3山口大学大学院医学系研究科器官病態内科学, 4山口大学大学院医学系研究科器官病態外科学

1Department of Clinical Laboratory Sciences, Yamaguchi University Graduate School of Medicine, 2Division of Laboratory, Yamaguchi University Hospital, 3Department of Medicine and Clinical Sciences, Yamaguchi University Graduate School of Medicine, 4Department of Surgery and Clinical Sciences, Yamaguchi University Graduate School of Medicine

キーワード :

背景:これまで重症大動脈弁狭窄症(AS)に対する第一選択治療法として,外科的大動脈弁置換術(SAVR)が行われてきた.近年,SAVRが実施不可能あるいはハイリスクと判断されたAS患者を中心に経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)が本邦でも実施可能となり,その実施件数は飛躍的に増加している.また,大規模臨床試験ではTAVIにおける術後の死亡率や心血管イベント発生率がSAVRと比較して非劣性であることが示されている.しかし,術前後における心エコー図指標を含めた循環動態の変化に関するTAVIとSAVRとの相違については明らかとなっていない.
目的:重症ASに対するTAVI施行前後における経胸壁心エコー図指標の変化をSAVR施行前後における同指標の変化と比較検討する.
方法:重症ASに対して山口大学医学部附属病院でTAVIまたはSAVRが施行され,治療前と治療1年後に経胸壁心エコー図検査を施行し得た重症AS患者を対象とした.ただし,生体弁同士での比較検討とするためにSAVRにおける機械弁を用いた症例は除外した.TAVI群(53例)とSAVR群(32例)の両群間で,術前および術後の身体所見,臨床背景,心エコー図指標とそれらの術前後の変化について比較検討した.
結果:TAVI群はSAVR群と比較して小柄な高齢女性が多かった(年齢 86歳(72-94)vs 78歳(64-88), p<0.001; 女性69.8%(37/53)vs 46.9%(15/32), p=0.036; 体表面積(BSA)1.36m2(1.13-1.84)vs 1.57m2(1.28 – 1.92), p<0.001).また,術前心エコー図指標を両群間で比較すると,大動脈弁口面積係数を含めたAS重症度に関する心エコー図指標に有意差はみられなかったものの,TAVI群の左室重量係数(LVMI)はSAVR群より有意に小さく(187.0g/m2(116.6 - 291.0)vs 215.0 g/m2(125.8 - 395.5), p=0.010),TAVI群のE/e’はSAVR群より有意に大(21.3(9.1-51.4)vs 16.5(8.9-37.6), p=0.015)であった.一方,術後心エコー図指標では,術前よりARが増大している症例がSAVR群では皆無であったのに対してTAVI群の18.9%(10/53)でみられた(p=0.009).また,置換弁有効弁口面積係数は両群間で有意差はみられなかったものの,術後LVMIはTAVI群がSAVR群より大きい傾向がみられ(121.0 g/m2(81.5 – 183.5)vs 110.0 g/m2(63.0 – 158.0), p=0.067),TAVI群の術前後LVMI変化率はSAVR群と比較して有意に小であった(-34.5%(-54.0 - -6.7)vs -48.4%(-67.7 - -27.8), p<0.001).
結語:治療前後ともに大動脈弁口面積係数に差がないTAVIとSAVRとの間に治療に伴う左室肥大の退縮率に相違がみられた.その原因として,TAVIがSAVRより治療リスクの高い症例が多いことに加えて,術前より増大した残存ARによる左室容量負荷が関与している可能性が示唆された.