大西 俊成, 中谷 敏, 仙石 薫子, 溝手 勇, 勝木 桂子, 森本 裕美子, 藤田 麻理子, 倉谷 徹, 澤 芳樹, 坂田 泰史

Toshianri ONISHI, Satoshi NAKATANI, Kaoruko SENGOKU, Isamu MIZOTE, Keiko KATSUKI, Yumiko MORIMOTO, Mariko FUJITA, Toru KURATANI, Yoshiki SAWA, Yasushi SAKATA

¹大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学, ²大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻機能診断科学, ³大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科学, ⁴大阪大学医学部付属病院超音波センター

¹Department of Cardiovascular Medicine, Osaka University Graduate School of Medicine, ²Division of Functional Diagnostics, Department of Health Sciences, Osaka University Graduate School of Medicine, ³Department of Cardiovascular Surgery, Osaka University Graduate School of Medicine, ⁴Division of Echocardiography, Osaka University Hospital

キーワード :

背景：心電図と心エコー図検査は，ともに左室肥大（LVH）の診断法として広く用いられている．本研究では，重度大動脈弁狭窄症（aortic stenosis: AS）に対する経カテーテル的大動脈弁留置術（Transcatheter aortic valve implantation: TAVI）前後における左室肥大（LV hypertrophy: LVH）について心電図と心エコー図を用いて比較検討した．
方法：対象は2009 年10月より2014年12月まで当院にてTAVIを施行された重度AS（大動脈弁口面積［aortic valve area: AVA］＜1.0cm2），231症例のうち左室駆出率が保持され（≥50％），心電図にて脚ブロック，心房細動，ペースメーカー調律，房室ブロックを除外した90症例．TAVI前，TAVI6ヶ月後の心電図および心エコー図検査を比較検討した．心電図（ECG-LVH），心エコー図（Echo-LVH）における左室肥大は，Sokolow-Lyon電位（SV1+RV5≥3.5mV）およびDevereuxの式を用いた左室重量係数（LVMI: 男性115g/m2，女性95g/m2）を満たすものと定義した．
結果：TAVI術前と6ケ月後においてAVAと大動脈弁平均圧較差は，有意な改善を認めた（0.7±0.2 vs 1.8±0.4 cm2, p＜0.0001，55±18 vs 10±4 mmHg, p＜0.0001）．Sokolow-Lyon電位とLVMIは，いずれも有意に減少した（4.1±1.6 vs 3.4±1.2 mV, p＜0.0001，151±15 vs 122±39 g/m2, p＜0.0001）．TAVI術前，Sokolow-Lyon電位とLVMIについて，7症例がともに陰性，30症例がいずれかが陽性，53症例がともに陽性であり，これらはASの重症度と関連を認めた（mean gradient=45±17 vs 48±15 vs 61±18mmHg, p＜0.001）．
結語：TAVI術後，LVHは有意に改善した．重度AS症例に対する心電図と心エコー図によるLVHの評価は，異なったものであり，これらを組み合わせることは重要である．