坂本 佳子, 柚木 純二, 秋吉 妙美, 秋吉 重康, 梅木 俊晴, 大島 まゆみ, 小屋松 純司, 井上 洋平, 挽地 裕, 野出 孝一

Yoshiko SAKAMOTO, Junji YUNOKI, Taemi AKIYOSHI, Shigeyasu AKIYOSHI, Toshiharu UMEKI, Mayumi OSHIMA, Junji KOYAMATSU, Youhei INOUE, Yutaka HIKICHI, Koichi NODE

¹佐賀大学病院循環器内科, ²佐賀大学病院心臓血管外科, ³佐賀大学病院ハートセンター, ⁴佐賀大学病院検査部

¹Department of Cardiovascular Medicine, Saga University Hospital, ²Department of Cardiovascular Surgery, Saga University Hospital, ³Heart Center, Saga University Hospital, ⁴Department of Laboratory Medicine, Saga University Hospital

キーワード :

【背景】
本邦では2013年からハイリスクの重症大動脈弁狭窄症（AS）患者に対する経カテーテル的大動脈弁留置術（TAVI）が開始された．現在，TAVIの手術件数は増加している．
【目的】
TAVI術前と術後について，心機能や心筋の変化を比較検討する．
【対象・方法】
2014年3月から2017年11月に当院でTAVIを施行した重症AS患者87例（平均年齢 84.1±5.5歳，女性 68例，男性 19例）を対象にした．留置した人工弁はSAPIEN XT 48例，SAPIEN3 25例，CoreValve 7例，Evolut R 7例であった．TAVI術前と術後7日目，術後30日目に，経胸壁心エコー図検査（TTE）を用いて計測した．
【結果】
術前のTTEは大動脈弁位最高流速 4.61±0.84m/sec，平均圧較差 52.2±18.5mmHg，大動脈弁口面積 0.61±0.18cm²であった．術後7日目では人工弁位最高流速 2.14±0.45m/sec，平均圧較差 9.8±5.2mmHg，弁口面積 1.61±0.36cm²に改善を認めた．左室後壁厚，左室拡張末期径，左室収縮末期径は，術前 12.2±1.9mm，41.5±7.4mm，26.5±8.1mmであり，術後7日目との比較では変化を認めなかったが，術後30日目で11.5±1.9mm，40.2±7.3mm，24.8±6.1mmと有意に小さくなった（p＜0.05）．左室心筋重量（Mモード法）は，術前 187.6±58.3gから術後30日目 164.3±47.8gに有意な減少を認めた（p＜0.05）．左室駆出率（Teichholz法）は術前 65.9±14.4％から術後30日目 68.3±10.0％に改善を認めたが（p=0.03），1回拍出量（ドプラ法）は変化を認めなかった（66.5±18.4ml vs. 66.9±17.9ml，p=NS）．
【結論】
TAVI術前から術後にかけて，術後7日目では大動脈弁位での流速や圧較差の減少や弁口面積の改善を認めたが，心機能や心筋の有意な変化は認めなかった．術後30日目に左室の後壁厚，拡張末期径，収縮末期径の変化が出現し，左室駆出率の改善や左室心筋重量の減少を認めた．