Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
症例 弁膜症その他

(S609)

卵円孔開存に伴うPlatypnea-orthodeoxia syndromeの1例

A Case of Platypnea-Orthodeoxia Syndrome with Patent Foramen Ovale

諸國 元太郎, 山本 圭亮, 小野 環, 時岡 浩二, 河合 勇介, 大江 透, 高谷 陽一, 中川 晃志, 赤木 禎治

Gentaro SHOKOKU, Keisuke YAMAMOTO, Tamaki ONO, Koji TOKIOKA, Yusuke KAWAI, Toru OHE, Yoichi TAKAYA, Kouji NAKAGAWA, Teiji AKAGI

1岡山市立市民病院循環器内科, 2岡山大学病院循環器内科

1Cardiovascular Medicine, Okayama City Hospital, 2Cardiovascular Medicine, Okayama University Hospital

キーワード :

症例は75歳女性.関節リウマチ,脳梗塞の既往あり.2017年2月に腰椎圧迫骨折で当院整形外科入院,その際に低酸素となることが何度かあったが,経過観察となっていた.2017年5月に炎症反応高値,酸素化不良を主訴に近位より紹介受診.酸素飽和度は臥位より座位で低下した.経胸壁心臓超音波検査では明らかなシャント血流は認めなかったが,マイクロバブルテストを行ったところ,Valsalva負荷を行う前から右心系→左心系に連続性にバブル移動を認め,右→左シャントありと判断した.右心カテーテル検査では,肺高血圧は認めなかったが,サンプリング測定で右心房中央部にて酸素飽和度の上昇を認めた.右心房-右心室の同時圧測定を行ったところ,平均圧較差が臥位2mmHg→座位4mmHgと増大を認め,右房造影では臥位から座位で右→左シャント血流の明らかな増加を認めた.経食道心臓超音波検査では,心房中隔は瘤状で菲薄化しており,卵円孔開存を認めた.こちらでも同様に臥位から座位で右→左シャント血流の増加を認めた.入院時に施行した胸部CT検査では,大動脈の過延長及び腰椎圧迫骨折に伴う円背の進行を認めており,それらによるPlatypnea-orthodeoxia syndromeの増悪と診断した.卵円孔開存に対し経皮的Amplatzer型閉鎖栓(Cribriform 25 mm)を行なった.術後経過は良好であり,シャント血流量の減少と酸素飽和度の改善を認めた.Platypnea-orthodeoxia syndrome(POS)は臥位に比べ立位・座位で低酸素血症を生じる症候群で,1949年Burchellらにより初めて報告された.原因としては,卵円孔開存,心房中隔欠損症などの解剖学的要素と大動脈の過延長や拡張,肺気腫,肺切除後,肝硬変などで直立時に短絡方向が変化するという機能的要素が合わさって発症すると報告されている.本症例では,既存の卵円孔開存に加え,腰椎圧迫骨折に伴う胸郭の変形により大動脈が右心系を圧排,座位において更に増強するために右房圧の上昇,右→左シャント量の増加による症状の増悪を認めた.心内シャントによるPOSに対するカテーテル閉鎖が有効であるとする何例かの報告がある.本症例でも術後早期に自覚症状,呼吸不全の改善を認め,経皮的Amplatzer型閉鎖栓は卵円孔開存によるPOSに対し有用であることが示唆された.