Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
肺高血圧

(S606)

間質性肺炎急性増悪により高度肺高血圧を認めた一例

A case of severe pulmonary hypertension resulted from acute exacerbation of interstitial pneumonia

中島 悠貴, 繼 敏光, 舩津 洋平, 黄 英文, 鈴野 千明, 小林 理美, 井上 典子, 柴田 勝, 森谷 和徳, 三田村 秀雄

Yuki NAKAJIMA, Toshimitsu TSUGU, Yohei FUNATSU, Hidefumi KOH, Chiaki SUZUNO, Masami KOBAYASHI, Noriko INOUE, Masaru SHIBATA, Kazunori MORITANI, Hideo MITAMURA

1立川病院初期臨床研修医, 2立川病院循環器内科, 3立川病院呼吸器内科, 4立川病院臨床検査科

1Resident Program, Department of Internal Medicine, Tachikawa Hospital, 2Department of Cardiology, Tachikawa Hospital, 3Department of Respiratory Medicine, Tachikawa Hospital, 4Clinical Laboratory, Tachikawa Hospital

キーワード :

【はじめに】
ダナポイント分類では肺高血圧症を5群に分類しており,肺疾患および/または低酸素血症に伴う肺高血圧症は第3群に分類されている.間質性肺炎(IP)に伴う肺高血圧症(PH-IP)もこの群に含まれる.PH-IPでは平均肺動脈圧は軽度の上昇にとどまることが多いと報告されており,高度肺高血圧をきたすことはまれである.われわれは,IPの急性増悪により低酸素血症を起こし,低酸素性肺血管攣縮症(HPV: hypoxic pulmonary vasoconstriction)が関与していたと考えられる高度肺高血圧を認め,低酸素血症の改善に伴い,右心圧負荷が解除された症例を経験した.
【症例】
症例は73歳男性.4か月前に間質性肺炎が急性増悪したため,ステロイドパルス療法を施行した.プレドニゾロン15 mgの内服と在宅酸素療法による外来加療で状態は安定しており,心エコー図で測定した三尖弁圧較差(TRPG)は21 mmHgであった.2週前に,怠薬による呼吸状態悪化のため呼吸器内科に入院となった.入院2日後に突然の呼吸困難を自覚し,酸素飽和度; 72 %(酸素4 L/分), 血液ガス分析; pO2 51.5 mmHgに低下していた.心エコー図で,右室拡大(右室基部径44.9 mm,右室中部径44.9 mm,右室長軸径78.9 mm),収縮期優位の心室中隔扁平化,TRPG 85 mmHg,McConnell徴候陽性であった.肺血栓塞栓症を疑い胸部-下肢造影CTを撮像したが,深部静脈血栓症や肺動脈血栓症はなかった.IPの急性増悪と診断し,ステロイドパルス療法を施行した.入院10日後,酸素飽和度は95%(酸素 4L/分)まで改善し,心エコー図で,右室径(右室基部径52.5 mm,右室中部径39.1 mm,右室長軸径78.7 mm),TRPG 34 mmHgの改善を認めた.入院15日後に,IP再増悪のためステロイドパルス療法を施行したが,TRPGは27 mmHgであった.
【考察】
間質性肺炎に伴う肺高血圧症(PH-IP)は低酸素依存性によるもの(血管攣縮,肺血管リモデリング,炎症)と低酸素非依存性によるもの(喫煙による内皮細胞の機能低下,肺血管床の減少,液体貯留)が関与していると考えられている.低酸素依存性の機序として,局所的な肺胞低酸素状態により周囲の肺動脈の攣縮が惹起され,肺血管抵抗が上昇する低酸素性肺血管攣縮症(HPV)がある.われわれは,IP増悪によりHPVを起こし,右心負荷に至った例を心エコー図で観察できた.