Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.677(2017年)→0.966(2018年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
肺高血圧

(S604)

混合性肺高血圧患者の左房心筋機能障害

Left atrial myocardial dysfunction in patients with combined post-capillary and pre-capillary pulmonary hypertension

加賀 早苗, 岡田 一範, 三神 大世, 川村 希実, 政氏 伸夫, 村山 迪史, 横山 しのぶ, 岩野 弘幸, 山田 聡, 安斉 俊久

Sanae KAGA, Kazunori OKADA, Taisei MIKAMI, Nozomi KAWAMURA, Nobuo MASAUZI, Michito MURAYAMA, Shinobu YOKOYAMA, Hiroyuki IWANO, Satoshi YAMADA, Toshihisa ANZAI

1北海道大学大学院保健科学研究院, 2北海道大学医学部保健学科, 3北海道大学病院超音波センター, 4北海道大学病院検査・輸血部, 5北海道大学大学院循環病態内科学

1Faculty of Health Sciences, Hokkaido University, 2Department of Health Sciences, School of Medicine, Hokkaido University, 3Diagnostic Center for Sonography, Hokkaido University Hospital, 4Division of Laboratory and Transfusion Medicine, Hokkaido University Hospital, 5Department of Cardiovascular Medicine, Faculty of Medicine and Graduate School of Medicine, Hokkaido University

キーワード :

【背景】
左心不全による左房圧上昇に続発する肺高血圧(PH)は後毛細管性 PHに分類されるが,その一部には,肺細動脈の器質的病変を合併し,左房圧に見合わないPHを呈する,混合性PH(Cpc-PH)と呼ばれる病態が存在する.Cpc-PHは予後不良であることが報告されているが,その成因や病態には不明の点が多い.そこで,Cpc-PH例の二次元スペックルトラッキング(2DST)法を中心とする心エコー所見を,純粋な後毛細管性PH(Ipc-PH)例と比較することにより,Cpc-PH例における左房心筋機能異常の有無とその意義を検討した.
【方法】
対象は,心カテーテル法による平均肺動脈圧≧25mmHgかつ肺動脈楔入圧>15mmHgであった洞調律の左心疾患患者31例である.これを肺毛細管前後の圧較差≧7mmHgまたは肺血管抵抗>3WUのCpc-PH群 12例(62±16歳)とそれ以外のIpc-PH群 19例(65±17歳)に分けた.心エコー法で,断層法により左室拡張末期径(LVDd),左室駆出率(LVEF),左房容積係数(LAVI)を計測した.パルスドプラ法により経僧帽弁血流の拡張早期流速(E)とその心房収縮期流速との比(E/A)を求めた.組織ドプラ法により僧帽弁輪の拡張早期運動速度(e’)を計測し,Eとの比(E/e’)を求めた.2DST法により,心尖部四腔像における左房の心室収縮期,心室拡張早期および心房収縮期各々の長軸方向のストレイン(順にLA-Sts,LA-Ste,LA-Sta)とピークストレインレート(順にLA-SRs,LA-SRe,LA-SRa)を絶対値として求めた.
【結果】
Cpc-PH群 と Ipc-PH群との間に,平均肺動脈圧(36±9 vs 31±5 mmHg,p=0.11)と肺動脈楔入圧(22±6 vs 24±5 mmHg,p=0.35)には有意差を認めなかった.Cpc-PH群ではIpc-PH群に比し,LVEF(34±18 vs 52±18 %,p=0.01),LA-Sts(9.2±3.0 vs 19.1±6.8 %,p<0.001),LA-Ste(6.2±2.3 vs 13.2±5.7 %,p<0.001),LA-Sta(3.0±1.9 vs 5.8±4.2 %,p=0.02),LA-SRs(0.45±0.16 vs 0.86±0.31 s-1,p=0.001)およびLA-SRa(0.28±0.11 vs 0.49±0.24 s-1,p=0.002)が有意に小であった.LVDd (63±11 vs 54±11 mm,p=0.06),LAVI(73±23 vs 64±24 ml/m2,p=0.29),E/A(3.10±1.45 vs 2.79±2.45,p=0.66),E/e’(16.5±4.6 vs 16.9±8.1,p=0.85)およびLA-SRe(0.42±0.27 vs 0.61±0.29 s-1,p=0.08)には両群間に有意差を認めなかった.
【考察】
本研究において,Cpc-PH群とIpc-PH群との間に,左房圧を反映する指標(肺動脈楔入圧,LAVI ,E/A,E/e’など)には有意差を認めなかったにも関わらず,左房リザーバ機能を反映すると考えられるLA-StsとLA-SRsおよび左房収縮機能を表すLA-StaとLA-SRaが,Cpc-PH群で有意に低下していた.左心不全に起因する左房圧の上昇は後毛細管性PHをもたらす.このとき,十分な左房リザーバ機能と左房収縮の代償的な増大は,左房圧上昇による肺循環への負荷に対して抑制的に働くものと考えられる.左房心筋の機能障害は,このような代償機転の十分な作動を阻害し,肺血管への負荷を蓄積させ,Cpc-PHをきたす可能性が考えられた.
【結論】
Cpc-PHをきたす左心不全患者では左房機能が低下しており,これがCpc-PHの機序に関与する可能性が考えられた.