Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
先天性

(S602)

Shear wave dispersionによるFontan術後肝線維化障害評価

Evaluation of Fontan associated liver disease by Shear wave dispersion

齊川 祐子, 安河内 聰, 瀧聞 浄宏, 武井 黄太, 日髙 惠以子

Yuko SAIKAWA, Satoshi YASUKOCHI, Kiyohiro TAKIGIKU, Kouta TAKEI, Eiko HIDAKA

1長野県立こども病院エコーセンター, 2長野県立こども病院循環器小児科, 3長野県立こども病院臨床検査科

1Echocenter, Nagano children's hospital, 2Pediatric cardiology, Nagano children's hospital, 3Clinical laboratory, Nagano children's hospital

キーワード :

【はじめに】
左心低形成症候群など2心室循環修復が不可能な先天性心疾患に対して一心室循環とする姑息手術としてFontan手術が行われる. 最近Fontan術後遠隔期の問題として,高い中心静脈圧(CVP)などの原因により生じた慢性的なうっ血による肝線維症,肝硬変,肝細胞がんなどの肝合併症(Fontan associated liver disease: FALD)が問題とされている.また,最近超音波による非侵襲的な肝臓の硬度(Elasticity)測定が行われるようになりFALDの早期発見の試みが行われている.
【目的】
今回,われわれは従来のShear Wave Elastography による肝臓の硬さ(Elasticity)に加え,周波数による伝搬速度の傾きから計算されるShear wave dispersion(SWD)(Canon medical社製 Aplio i-900)という指標を用いて,FALDについて検討したので報告する.
【対象】
Fontan術後患者15名(Fontan術後6-22年),対照として右心系圧の上昇を伴わない先天性心疾患術後患者4名(5-8歳).
【方法】
装置はAplio i900(Cannon medical社製)及びコンベックスプローブを使用し,肝臓右葉の被膜下2cmの肝臓組織でAcoustic Radiation pulseを用いて呼気末期のShear wave velocityを計測し, Elasticity(SWE), Dispersion(SWD)を算出した.この指標と,肝硬変の発生などの臨床データおよび心カテーテル検査の血行動態指標,さらに肝線維マーカーであるヒアルロン酸やP-III-Pなどの血液検査データと比較した.相関関係はSpearmanの順位相関係数を用い評価した.
【結果】
Fontan術後患者においては対照群に比べSWEとSWDは, 共に高値を示した.(SWE;28.6±17.4 : 6.2±1.3 kPa, SWD;21.8±5.1 : 12.1±1.4(m/s)/kHz).またSWE とSWDは正の相関を示した.FALDとしての肝硬変と診断された3例中2例でSWE>50kPa, SWD>30(m/s)/kHz,SWE/SWD>2.0であった.残りの1例はSWEとSWDは低値であったが,SWE/SWD=1.4と高値を示した.各検査指標との比較では,SWE/SWD値と術後経過年数が正の相関(R=0.56, p=0.031), Ⅳ型コラーゲン値とは負相関(R=-0.59, p=0.038)が認められた.
【考察と結語】
FALDとしての肝線維症,肝硬変の早期検出法としてSWEの有効性について報告はあるが,CVPの影響の依存が問題とされている.肝臓実質の粘性を反映すると考えられるSWDを合わせて用いることにより,肝線維症・肝硬変のスクリーニングに使用できる可能性があると考えられた.
1)Hepatic Fibrosis Is Universal Following Fontan Operation, and Severity is Associated With Time From Surgery: A Liver Biopsy and Hemodynamic Study, David J. Goldberg, Lea F. Surrey, Andrew C. Glatz, et al. Am Heart Assoc. 2017;6: e004809. DOI: 10.1161/
JAHA.116.004809.