Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
先天性

(S601)

Fontan患者における妊娠中の心機能変化

Impact of Pregnancy in Patients after Fontan Operation

島田 衣里子, 富松 宏文, 篠原 徳子, 稲井 慶, 杉山 央

Eriko SHIMADA, Hirohumi TOMIMATSU, Tokuko SHINOHARA, Kei INAI, Hisashi SUGIYAMA

東京女子医科大学循環器小児科・成人先天性心疾患病態研究部門

Department of Pediatric Cardiology, Department of clinical research for adult congenital heart disease, Tokyo Women's Medical University

キーワード :

【背景】
先天性心疾患の予後の改善に伴い,近年先天性心疾患のある女性患者の妊娠・出産は増加傾向にある.特にFontan手術後の患者は特殊な血行動態を呈することから,妊娠に伴う心不全や不整脈の出現などについて注意深い管理が必要となることが知られている.
【目的】
Fontan手術後患者における妊娠中の心機能の変化について検討すること.
【方法】
2015年1月から2017年12月に当院で出産した5名のFontan手術後患者について後方視的に検討した.妊娠中の心機能はVivid E9を用いて,経時的に評価した.
【結果】
原疾患は三尖弁閉鎖症1例,右室性単心室4例で,初回のFontan手術の平均年齢は5±1歳であった.いずれの症例も妊娠前のNew York Heart Association機能分類はclassⅠで,出産時平均年齢は28±6歳であった.平均在胎週数は33±4週(28-37週),平均出生体重は1734±535g(1022g-2272g)であった.経過中,産科的合併症として1例に切迫早産,2例に絨毛膜下血腫と切迫早産を認めた.循環器的合併症として不整脈はなかったが,1例で心不全の増悪を認めた.経過中に心収縮能の低下した症例はなかった.経過中に心不全を生じた1例では,房室弁逆流は軽度のままであったが,妊娠初期と後期ではE/Aが1.1から1.8へ上昇し,tei indexは0.49から0.61へと増大を認めた.一方で,中等度以上の房室弁逆流を認めた1例では逆流の増加を認め,心拍数が妊娠初期の55beat/minから妊娠中期には92beat/minまで上昇し,E/Aは1.5から0.7と低下,tei indexが0.47から0.58に増大した.また,軽度の大動脈下狭窄と大動脈弁逆流を認めた1例では大動脈弁逆流の増加を認め,妊娠初期と後期ではE/Aは1.7から2.5と上昇し,tei indexは0.41から0.59と増大を認めた.出産後1か月の評価では,いずれの症例もtei indexの増大が遷延し,弁逆流の増加を認めた症例では弁逆流は増加したままであった.
【結語】
 Fontan術後患者における妊娠では循環器的合併症だけでなく,産科的合併症を併発する症例が多かった.Fontan手術後患者では妊娠中の循環血漿量の増加や心拍数の増加による影響を容易にうける可能性があり,妊娠中の経過を注意深く追う必要があると考えられる.また,産褥期1か月程度では心機能の回復は十分ではないため産褥期の心不全にも注意を要すると考えられた.