Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 循環器
血管

(S600)

静脈血栓塞栓症リスク評価モデルとしてのCapriniスコアとPaduaスコアの妥当性

Validation study of Caprini score and Padua score to assess risk of venous thromboembolism

横山 典子, 畠山 礼, 菅原 亜紀子, 高橋 千里, 葛西 智子, 成田 弘, 鈴木 博義, 篠崎 毅

Noriko YOKOYAMA, Aya HATAKEYAMA, Akiko SUGAWARA, Chisato TAKAHASHI, Tomoko KASAI, Hiroshi NARITA, Hiroyoshi SUZUKI, Tsuyoshi SHINOZAKI

1国立病院機構仙台医療センター臨床検査科, 2国立病院機構仙台医療センター循環器科

1Department of Clinical laboratory, National Hospital Organizazion Sendai Medical Center, 2Department of Cardiovascular Medicine, National Hospital Organizazion Sendai Medical Center

キーワード :

【背景】
当院では2012年より日本循環器病学会2009年版ガイドラインに準じて,静脈血栓塞栓症(VTE)リスク評価モデルを作成し,入院患者のVTE予防対策を実施してきた.そこではリスクを低,中,高,最高の4段階に分け,高リスク時には抗凝固療法,または,フットポンプを,最高リスク時には抗凝固療法とフットポンプの併用を推奨した(旧予防法).しかしこの方法では肺塞栓(PE)による死亡を減少させることはできなかった.そこで2017年1月より米国胸部疾患学会2012年VTE予防ガイドラインに完全に準拠する方針とした.そのために,リスクアセスメントモデルとして手術患者にはCapriniスコアを,非手術患者にはPaduaスコアを採用し,EBMに従った抗凝固療法を強力に推奨した.手術患者には手術の種類ごとに異なる予防アルゴリズムを採用した.非手術患者の場合はリスクを2段階に分け,抗凝固療法を実施するか,または,実施しないかの2種類だけの選択肢とし,弾性ストッキングとフットポンプは出血性合併症リスクの高い症例に限って抗凝固療法の代用として使用することを推奨した(新予防法).
【目的】
2017年1月から当院で新たに採用したCapriniスコアとPaduaスコアを用いたVTE予防法の妥当性を評価すること.
【対象】
2014年1月から2017年12月までに入院3日目以降に新規に発症したVTEを対象とした.下肢静脈血栓(DVT)は下肢静脈エコーによって診断し,腸骨静脈から膝窩静脈の何れかの場所に完全閉塞性血栓を認めた症例と定義した.CVカテーテル周囲のDVT,死戦期に発症したDVTは除外した.PEは造影CTによって診断し,症候を有する症例と定義した.
【結果】
旧予防法時のDVT数は2014, 2015, 2016年に,それぞれ,11人,15人,13であったが,新予防法の2017年は7人と減少した.PEは2014, 2015, 2016年に,それぞれ,3人,2人,1人であり,2017年は2人と変化を認めなかった.DVT症例とPE症例のうち,発症時に適切な抗凝固療法が実施されていなかった症例は,それぞれ,旧予防法時には77%,83%,新予防法時には86%,100%を占めた.
【考察】
CapriniスコアとPaduaスコアを用いた新しいVTE予防法はDVT数を低下させたが,PE数を減少させなかった.VTEを発症した患者の多くは抗凝固療法を実施されていなかった.