田中 みどり, 菅原 基晃, 住ノ江 功夫, 仁木 清美, 小笠原 康夫

Midori TANAKA, Motoaki SUGAWARA, Isao SUMINOE, Kiyomi NIKI, Yasuo OGASAWARA

¹姫路獨協大学医療保健学部, ²姫路赤十字病院検査技術部, ³東京都市大学医工学科, ⁴川崎医療福祉大学医療技術学部

¹Health Care Sciences, Himeji Dokkyo University, ²Inspection Technology Department, Himeji Red Cross Hospital, ³Medical Engineering, Tokyo City University, ⁴Health Science & Technology, Kawasaki University of Medical Welfare

キーワード :

【背景と目的】
ハンドグリップテスト（HGT）は，循環器疾患患者の心機能を調べる簡便なテストであるが，テスト中の血行動態の変化の詳細な報告は少ない．本研究ではHGT中の心および頸動脈血行動態の変化を明らかにする．
【対象】
若年男性9名（20 ± 0.4歳）.
【方法】
最大握力の40％強度で1分間握力計を保持し続けている間に，30s，60s時点で収縮期および拡張期血圧（sysP, diaP），心拍数（HR）および心エコー指標を測定した．頸動脈エコーでは，エコートラッキング法とカラードプラー法により血管直径変化波形（D），血流速度波形（U），頸動脈1回拍出量（caroSV）を測定し，さらに直径変化波形と血圧波形の相似性から，上腕動脈血圧で頸動脈直径変化波形を較正して圧波形を得た．圧波形と血流速度波形の時間微分の積として定義されるWave Intensity（WI =（dP/dt）（dU/dt））を計算し，wave intensityの収縮初期のピーク値W₁と収縮末期のピーク値W₂を自動算出した．心エコーと頸動脈エコーは同一被験者で別々の日に施行した．各指標の時間に対する回帰分析を行った．
【結果】
心エコーでは，HR，sysP，diaP，心拍出量（CO）は有意に増加した（P ＜ 0.001）．駆出率（EF），拡張末期容積（EDV）,収縮末期容積（ESV）, 1回拍出量（SV）には有意な変化はなかった．頸動脈エコーでは，W₁は有意に低下した（p ＜ 0.01）（図1）が，W₂は有意に増加した（P ＜ 0.01）（図2）. caroSVは有意に上昇した（p ＜ 0.01）．頸動脈のmaxU, maxD,minDに変化は無かった．
【考察】
W₁はPeak dP/dtに比例する．Peak dP/dtはEDVに依存するが．心エコーデータではEDVは変化していない．従って，W₁が低下した理由は更なる検証が必要である．W₂は左室圧低下の時定数（τ）と逆相関する．収縮末期圧が高いとτは低下するので，HGTによるsisPの増加によりW₂は増加したと考えられる．W₂の増加は，拡張能の増加を示唆する．
【結論】
若年健常男性に対するHGT中の心および頸動脈血行動態を明らかにした．頸動脈での心収縮性指標W₁は低下し，拡張機能指標W₂は増加した．