Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 基礎
音場計測

(S595)

光位相コントラスト法と音響ホログラフィを用いた診断用超音波音場の測定

Measurement of diagnostic ultrasound field by combination of optical phase contrast method and acoustic holography

吉澤 晋, 中村 拓也, 梅村 晋一郎

Shin YOSHIZAWA, Takuya NAKAMURA, Shin-Ichiro UMEMURA

1東北大学大学院工学研究科, 2東北大学大学院医工学研究科

1Graduate School of Engineering, Tohoku University, 2Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
診断用超音波音場の測定では,ハイドロフォンを走査して直接測定することが一般的に行われている.しかしながら,ハイドロフォンの3次元走査測定には日オーダの時間を必要とし,1本のプローブで用いられる代表的ないくつかの音場を測定するだけでも膨大な時間となることが製品開発における問題点の1つであるとされる.測定時間を減らすためのアプローチとして音響ホログラフィがある.音響ホログラフィでは,ハイドロフォンの2次元走査による空間2次元時間1次元の測定データを音源として数値計算に入力し,空間3次元時間1次元の音場データを得ることができる.そのため,測定時間を数時間程度まで大幅に短縮することができる.本研究では,ハイドロフォン走査の代わりに光学測定を音響ホログラフィと組み合わせて音場を測定する手法を提案し,その有効性を検証することを目的とする.光学測定で撮像素子としてカメラを用いると,2次元データを一度に取得することができるため,測定時間をさらに短縮することができる.
【方法】
光学測定手法としては,位相コントラスト法を用いる.これは,位相差顕微鏡で用いられている手法と原理的に同じものである.超音波音場では,音圧によって光の位相がわずかに変化し,この量は音圧に比例するとみなせる.したがって音場に平行光を入射させると,光が通った直線上の音圧の積算値に比例した量だけ光の位相が変化する.位相変化した光の成分と位相変化していない光の成分と干渉させることで,位相変化を輝度変化としてカメラで取得できる.測定対象を回転させて測定することで様々な角度からの積算値を取得し,逆ラドン変化によって3次元の空間分布が算出される.
測定対象の診断用超音波プローブはセクタープローブとし,中心周波数1.88 MHzの矩形波パルスで駆動した.焦点距離は50 mmとし,正面方向(0°方向)と15°方向にフォーカスさせた2種類の音場について,プローブ近傍の音場測定を光位相コントラスト法によって行った.測定はガラス窓の水槽中に超音波プローブを入れ,波長532 nmのパルスレーザ光を光源として用いた.得られた空間3次元時間0次元の圧力データを用いて音響ホログラフィの数値計算を行い,焦点領域を含む空間3次元時間1次元の音場データを算出した.
【結果・考察】
焦点の圧力をハイドロフォンでの直接測定結果と比較した.0°方向にフォーカスさせたときの焦点圧力のハイドロフォン測定値はピークピーク値で440 kPaであった.一方,提案手法による結果は410 kPaであった.15°方向にフォーカスさせたときは,ハイドロフォン測定で480 kPa,提案手法で440 kPaであった.提案手法の方がハイドロフォン測定よりも小さい値となったものの,いずれも10%以内の差であった.また,位相コントラスト法の測定時間は30分であり,測定時間としてはハイドロフォンの2次元走査に比べて大幅に短縮することができた.ただし,音響ホログラフィにおいて非線形性を考慮した3次元計算を行っており,これに12時間程度要したため,短時間の測定時間のメリットを最大限生かすためには数値計算の一層の高速化が必要であることがわかった.