Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 基礎
超音波計測システム

(S592)

B-line アーチファクトの発生機序に関する一考察:その1

A consideration on the mechanism of B-line artifacts: Part 1.

神山 直久, 金山 侑子, 亀田 徹

Naohisa KAMIYAMA, Yuko KANAYAMA, Toru KAMEDA

1GEヘルスケア超音波製品開発部, 2安曇野赤十字病院救急科

1Ultrasound Division, GE Healthcare, 2Department of Emergency Medicine, Red Cross Azumino Hospital

キーワード :

【はじめに】
B-line artifacts(BLA)は胸膜部から発生する輪郭を持った線状高輝度エコーを指す.BLAの発生は肺水腫等の兆候を示し,診断上有用な所見として知られている.この発生機序は,肺に蓄積した水分と空気の境界の多重や,共鳴の可能性などが報告されている[1]が,いまだ諸説あり,未解明なことも多い.今回我々は,水滴を模擬したガラス球およびゲルを利用し,BLA発生機序について検討した.
【方法】
図示のような実験系でガラス球を設置すると,送信された超音波はトレイと球の接触面からのみ球内に入射し,球と空気の接面で反射し,一部は再び接触面を通過しプローブに戻る.つまりソノジェルが胸壁,トレイが胸膜,球が水,その上部の空気が肺胞内空気を模擬する.ガラス球の直径は0.1 ~ 10 mm(東新理興)で5種類を,またガラス球の代わりに高分子吸収体のゲルを砕いた不規則断片も使用した.超音波装置はLOGIQ E9, 探触子はC1-6(3.5 M 凸)と9L(9Mリニア).送信周波数2~9 MHzで変化させartifactsの発生を画像で記録した.またRF信号による周波数解析も行った.
【結果】
(1)0.8mm以上のガラス球ではBLA状エコーの発生が再現性を持って確認された.0.4 mmではコメットエコーは確認されたが長さは10 cm未満であった.0.2 mm以下では複数のガラス球のうち一部のみからコメットエコーが発生した.(2)BLAが発生した場合は,周波数を変化させても継続して観察された.(3)ゲルでは,いくつかの断片から選択的に発生した.それらに共通する特徴は,1 mm程度の高さのあるもので,全体の形状(特に球形か否か)には無関係であった.(4)周波数解析結果からはBLA状エコーの周波数特性は送信周波数とほぼ一致した.
【考察】
実際の生体では空気との接面は水であるが,画像の特徴からBLA同様の現象を再現できていると考えられた.周波数を大きく変えてもBLA状エコーの様相が変わらないことから,この現象はガラス球の中で起こる多重反射であと考察できる.周波数特性が変化していないことからも,共鳴現象とは考えにくい.生体でも0.8 mm 程度の大きさの水滴が必要であるなら,例えば1個の肺胞(0.2 mm)に溜まった水滴によって起こるものではないことが示唆される.また小葉間隔壁に浸潤した水の形状は本結果の発生条件を満たし,Bライン成因の可能性の一つであることが示唆された.
文献[1]Lichtenstein et al: Crit Care Med. 2005; 33: 1231-8.