Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 基礎
超音波計測システム

(S592)

呼吸・心拍の非接触モニタリングを目的とした空中超音波による胸部変位ベクトルの計測

Measurement of displacement vector on chest using airborne ultrasound for non-contact monitoring of respiration and pulsation

林 泰輝, 平田 慎之介, 蜂屋 弘之

Taiki HAYASHI, Shinnosuke HIRATA, Hiroyuki HACHIYA

東京工業大学工学院

School of Engineering, Tokyo Institute of Technology

キーワード :

【目的】
近年,様々な環境におけるバイタルサインモニタリングの研究・開発が盛んに行われている.本研究では,空中超音波を用いて呼吸や心拍を非接触で計測するシステムを提案し,その計測・信号処理手法について検討を行なっている.空中超音波による呼吸,心拍などの計測は古くから試みられ[1,2],非接触で簡便な計測が可能な上に,夜間・暗所や電磁波を用いることが困難な環境においても,呼吸・心拍のモニタリングが期待できる[3].本報告では,複数の受波器を用いて空中音響画像を作成し,胸部の2 次元変位を計測する手法について検討を行う.
【方法】
脱衣状態・仰臥位の被験者の胸部前方に送波器を配置し,擬似ランダム符号の一種であるM系列で変調した超音波を送信する.続いて,送波器の左右に配置した2台の受波器で胸部から反射したエコーを受信し,送信したM系列との相互相関処理を行う.得られた相互相関関数では,信号エネルギーがパルス状に圧縮されるため,エコーのSN比と時間分解能が向上する.そして,2つの相互相関関数から合成開口法を用いて空中音響画像を生成し,画像中の高輝度部から体表面の反射点を特定する.連続的に生成された空中音響画像から,反射点の位相情報を追尾することで,計測システムの空間分解能より十分小さい2 次元変位を計測する.
本実験では,被験者に一定の周期を表す動画を提示することで,呼吸の周期を4秒とした.また,心拍のリファレンスには被験者の指に装着した脈波センサ(PWS)を用いた.
【結果】
まず,計測した左胸部の反射点の2次元変位における前後方向の成分およびPWSの出力をFig. 1 に示す.超音波で計測した変位ベクトルには,約4秒周期の呼吸と,約1秒周期のスパイク上の波形が確認された.このスパイク状の波形はPWSの結果から,心拍によるものと推測される.そして,変位ベクトルとPWSの出力に対して,窓幅8 sの短時間フーリエ変換を行った結果をFig. 2に示す.得られた振幅スペクトルからも1分間に15回程度の呼吸と60回程度の心拍を確認することができる.以上より,空中音響画像を用いて計測した胸部の2 次元変位から呼吸および心拍を同時に,高精度で非接触計測が可能であることが示された.
【参考文献】
[1]穂垣 他,第48回日超医抄録集,603(1986).
[2]松本 他,第87回日超医抄録集,5410(2014)
[3]K. Hoshiba, et al. Physics Procedia. 2015;70:364.