炭 親良, 浅川 濯

Chikayoshi SUMI, Taku ASAKAWA

¹上智大学理工学部情報理工学科, ²ジャパンプローブシステム開発部

¹Dept. of Info. & Commun. Sci., Sophia University, ²System development division, Japan Probe Co., Ltd.

キーワード :

【目的】
よく知られているフーリエビームフォーミングに古典的なモノスタティック開口面合成（偏向無し）がある．また，近似処理に基づく波数マッチングを要する平面波送信時のビームフォーミングがある．これらに対し，本学本研究室では，それらのビームフォーミングの他，マルチスタティック開口面合成や，フォーカスビームやフォーカス無しの送信，複数波動の同時送信等の任意の送信時の受信ビームフォーミングの開発に取り組み，波数マッピングにおいて近似処理を要さない送信及び/又は受信の偏向を可能にした．また，仮想の送信や受信のセンサを用いたり，任意形状の開口素子アレイ探触子を用いたり，任意座標系においてビームフォーミングを完了することも可能にした．高速且つ通常のDAS処理よりも高精度なビームフォーミング処理を可能にしている．これまでは主として2次元ビームフォーミングを報告して来たが，本稿ではより高い効果のある3次元ビームフォーミングを行った初期結果を報告する．
【対象と方法】
Field IIを用いて，数値ファントムにおいて開口面合成用受信データを作成した．2次元リニア型アレイ探触子のスペックは，超音波周波数3MHz，素子幅0.2×0.2 mm，間隙0.04mm，32×32素子である．理想的な点散乱体を深さ40mmと50mmの2ヵ所に設定した．また，寒天ファントムを対象にして，上田日本無線社製同型探触子（16×16素子）の2次元機械走査を行って64×64素子の送受信を行った．送受信器を含むエコーデータ取得装置はジャパンプローブ社製である．超音波周波数1.5MHz，素子幅0.35×0.35mm，間隙0.05mmである．寒天は水を介して探触子から27mmの位置に寒天濃度の異なる直径1cmの円柱状のつめものを持つ（つめものは7％，周囲は3％，グラファイトは共に4％）．
【結果と考察】
シミュレーションにおいては，点散乱体にて生じたエコー信号を評価し，深さによらず略同一のビーム幅が得られていることを確認できた．また，図1には寒天ファントムにおいて得られたエコー像を示す．深さ方向を含む中央面の2次元画像である．円柱状のつめものの断面（円形領域）を確認できた．
【結論】
3次元シミュレーションおよび寒天ファントム実験において開口面合成の結果を得た．今後は観測対象毎に超音波探触子のスペックの調整を行うと共に装置の実時間化を図り，上記の他のビームフォーミングを行った場合を含め，実時間性と精度に関する詳細な評価を行っていく．