Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 基礎
心筋・血管計測

(S584)

心臓壁における心筋収縮の興奮伝播の超音波計測

Ultrasonic Measurement of Propagation of Myocardial Contraction Response in Heart Wall

小林 樹, 荒川 元孝, 金井 浩

Itsuki KOBAYASHI, Mototaka ARAKAWA, Hiroshi KANAI

1東北大学大学院工学研究科, 2東北大学大学院医工学研究科

1Graduate School of Engineering, Tohoku University, 2Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
心筋に虚血が生じた場合,虚血部において心筋の収縮機能に異常が生じ,心筋の収縮伝播速度が低下することが知られている.そこで,電気的興奮で生じる心筋収縮運動を計測できれば,疾患による心筋細胞の異常を早期検出できる可能性がある.本報告では,高フレームレート計測された超音波RF信号に対し,スペックルトラッキング法を用いて心臓壁の2次元的な運動を解析し,心筋の収縮特性の評価を行った. R波近傍において心臓壁の2次元速度を推定し,速度波形及びその位相成分における,空間分布の時間的変化を推定することにより,心筋の収縮応答の伝播の様子を評価した.
【方法】
本報告では,超音波RF信号間の相互相関関数を利用したブロックマッチング法を適用し,心臓壁の2次元変位推定を行った.実験環境は,平面波を用いた並列ビーム形成法により, 860 Hz の高フレームレート収集を実現し,健常男性3名を対象にin vivo計測を行い,R波近傍において心室中隔壁の2次元速度を推定した.さらに,推定した速度波形に対しHilbert変換を利用して,位相波形を算出した.アンラップ位相処理を行い,各ビームの位相波形の等位相直線を求めることで,収縮応答が伝播する速度を最小二乗法で決定した.
【結果】
心電図Q波後において,ビーム方向速度波形とラテラル方向速度波形より,心筋壁が拡張から収縮へと遷移する様子が確認された.また,速度波形のゼロクロス点に着目することにより,両方向とも,心基部側から心尖方向へ収縮応答が約2 m/sの速度で伝播している様子が確認できた.これは,電気的興奮の伝播を表すものと考えられ,その伝播速度の文献値1-4m/s[1]と対応する.さらに,速度波形の位相から各時刻における伝播速度を推定したところ,ビーム方向とラテラル方向とも,Q波から心Ⅰ音にかけて,約1-4m/sの速度で伝播している様子が確認でき,2心拍間で再現性がみられた.
【結論】
スペックルトラッキング法で計測した心室中隔壁の2次元速度より,収縮へと遷移するR波近傍の動きを観測することができた.また,高時間分解能で計測を行うことにより,心室中隔壁の収縮応答が心基部側から心尖方向へ伝播する様子を確認できた.さらに,速度波形の位相を用いることで,各時刻で伝播速度を算出した.これらの結果から,提案法による心臓収縮機能解析が,心機能評価診断の一助となる可能性が示唆された.
【参考文献】
[1]D. Durrer, et al. Circulation 1970;41:899.