大坂 卓司, 吉川 秀樹, 藤原 圭祐, 井上 敬章, 園山 輝幸, 福永 峻也, 村山 直之

Takashi OSAKA, Hideki YOSHIKAWA, Keisuke FUJIWARA, Noriaki INOUE, Teruyuki SONOYAMA, Syunya FUKUNAGA, Naoyuki MURAYAMA

¹株式会社日立製作所ヘルスケアビジネスユニット, ²株式会社日立製作所研究開発グループ

¹Healthcare Business Unit, Hitachi, Ltd., ²Research & Development Group, Hitachi, Ltd.

キーワード :

【背景】
従来の超音波による肝脂肪化検査は，検査者の主観に基づく画像診断がなされているため定量的な評価が困難とされている．一方で近年，非アルコール性脂肪性疾患に対する注目も高まっており，肝硬度測定を用いた肝線維化診断に加え減衰を定量的に評価できる機器が臨床応用されている．しかしながら，同時にB-mode像を確認できないという制限があった．
【目的】
今回我々は，汎用型超音波診断装置を用い，B-mode像と同時に組織の減衰係数を推定する技術の開発と評価を行った．
【方法】
超音波診断装置ARIETTA 850 と，腹部用コンベックスプローブC251（5-1MHz）を用いて減衰係数を算出する検討を行った．減衰係数は，異なる周波数の超音波より得られた受信信号の振幅差の傾きから算出した．算出した値を評価するため，減衰係数をコントロールした5種類の評価用ファントムTYPE A, B, C, D, E（OST社製 SOPT-086）に対し，それぞれ計測断面を10ヶ所変えて計測し，その10ヶ所での平均値ATT_Ave，および計測の再現性を表す変動係数（％CV 標準偏差/平均値），ファントム公称値との誤差（⊿ATT ％）の算出を行った．
【結果】
評価用ファントムの減衰係数0.44, 0.61, 0.81, 1.11, 1.22（dB/cm/MHz）に対し，平均値ATT_Aveは，それぞれ0.43, 0.61, 0.87, 1.16, 1.24（dB/cm/MHz）であった（Fig.1）．また，計測の再現性を示す変動係数％CVは7～15％，ファントム公称値との誤差（⊿ATT）は，±10％以内であった．
【まとめ】
評価用ファントムに対し汎用型超音波診断装置を用いた評価において良好な結果を得た．また，超音波診断装置ARIETTA 850において，せん断を用いた硬さ計測機能であるShear Wave Measurement（SWM）と本機能を組み合わせたことで，B-mode像を確認しながら硬さ情報と減衰情報の同時計測を可能とした．更に，炎症の影響を受けないとされるReal-time Tissue Elastography（RTE）との併用により，慢性肝疾患に対する超音波検査において非侵襲的に多角的な情報を提供でき得ると考える．