Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 基礎
組織性状計測

(S581)

超音波散乱波の統計的解析による生体軟組織内温度測定

Measurement of Internal Temperature in Biological Soft Tissue by Statistical Analysis of Ultrasonic Scattered Echoes

竹内 道雄, 松井 裕太, 高野 嘉之, 長谷川 英之

Michio TAKEUCHI, Yuta MATSUI, Yoshiyuki TAKANO, Hideyuki HASEGAWA

1立山科学工業株式会社メディカル事業部, 2株式会社立山科学デバイステクノロジー技術開発セクション, 3富山大学大学院理工学研究部

1Medical Division, TATEYAMA KAGAKU INDUSTRY CO., LTD., 2Engineering Development Section, TATEYAMA KAGAKU DEVICE TECHNOLOGY CO., LTD., 3Graduate School of Science and Engineering for Research, University of Toyama

キーワード :

【目的】
近年,非侵襲での体内温度測定手法として,超音波散乱波の統計的解析による生体組織内温度測定方法が提案され,いくつかの研究グループがin vitro実験での生体組織内温度測定結果を報告している.しかしながら過去の研究では上記手法をin vivo実験または臨床に用いる方法についての検討が十分に行われていない.原理上特に,拍動や体動などによって超音波走査範囲内で変位が生じた場合,正しく解析を行うことが困難になることが予測される.本研究では,豚生肉を対象に超音波散乱波の統計的解析を行い,生体組織加熱中に変形が生じた場合の超音波散乱波の有効な統計的解析手法を検討した.
【方法】
豚肩肉を高周波温熱治療器で30℃から42℃まで加熱し,一次元アレイ型の超音波トランスデューサーによって幅25 mm, 深さ30 mm の走査範囲の超音波散乱波測定を行った.尚,加熱により豚肉に変形が生じたことがB-mode画像によって確認された.超音波散乱波の統計解析は,生体組織変位に対応するため,大きさ(0.6 mm×0.6 mm, 1.2 mm×1.2 mm, 1.8 mm×1.8 mm)のRegion of Interest(ROI)を用いて行い,得られた統計因子の温度変化強度 α を2次元のhot-scaleカラー画像として描画することで30 ℃から42 ℃の生体組織内温度変化を表した.参照物質として本実験での加熱領域では変形が生じないと考えられる擬似生体寒天ファントム に対しても同様の測定と解析を行った.加熱によって生体組織に変形や歪みが生じる場合のROI サイズ調整の有効性を評価した.
【結果】
参照物質寒天ファントムにおいては,全てのROIサイズのαのhot-scale画像において温度変化が確認出来た.一方,豚肉においては最小ROIサイズではhot-scale 画像で温度変化が確認出来ず,ROI サイズ1.2 mm×1.2 mmと1.8 mm×1.8 mm でのhot-scale画像では温度変化を確認することが出来た.
【結論】
加熱によって変形が生じる生体組織に対しては,ROIサイズを大きくすることで超音波統計因子の温度変化強度を表すαのhot-scale 画像によって温度変化を測定することが出来た.この結果より,in vivo実験や臨床おいて測定対象に拍動や体動などによって変位がある場合にも,ROIサイズの調整や追跡を行うことにより適用可能であることが示唆された.