濵崎 直樹, 塩谷 直久, 今井 照彦, 林田 幸治, 安川 元章, 川口 剛史, 太地 良祐, 高濱 潤子, 丸上 永晃, 平井 都始子

Naoki HAMAZAKI, Naohisa SHIOYA, Teruhiko IMAI, Kouji HAYASHIDA, Motoaki YASUKAWA, Goushi KAWAGUCHI, Yoshiyuki TAICHI, Junko TAKAHAMA, Nagaaki MARUGAMI, Toshiko HIRAI

¹塩谷内科診療所, ²済生会奈良病院内科, ³済生会奈良病院臨床検査部, ⁴奈良県立医科大学胸部・心臓血管外科, ⁵奈良県立医科大学放射線科, ⁶奈良県立医科大学総合画像診断センター

¹Internal medicine, Shioya Clinic of Internal Medicine, ²Internal Medicine, Saiseikai Nara Hopital, ³Clinical Labolatory, Saiseikai Nara Hopital, ⁴Thoracic and cardiovascular Surgery, Nara Medical University, ⁵Radiology, Nara Medical University, ⁶Center of Comprehensive diagnostic imaging, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
我々は1996年より体表からのアプローチで呼吸器超音波に取り組んできた．すなわち血流診断を中心とした超音波の新しい技術を次々と呼吸器疾患に臨床応用し報告してきた．そしてこのたびは呼吸器疾患に体表から組織の硬さを評価するエラストグラフィの臨床応用を試みた．呼吸器領域におけるエラストグラフィは，strain法が気管支超音波（EBUS）で縦隔や肺門リンパ節の評価に臨床応用された報告を散見するが，Shear Wave Elastographyの報告はほとんどない．このたび我々は体表からのアプローチで胸膜に接する肺内病変（胸膜下病変）にShear Wave Elastographyを臨床応用し知見を得たので報告する．
【対象】
Bモードで胸壁より描出可能な胸膜に接する肺内病変（胸膜下病変）
5例で内訳は良性疾患2例（肺炎2例），悪性疾患3例（肺扁平上皮癌3例で角化扁平上癌2例，非角化扁平上皮癌1例である．悪性疾患はすべて手術症例である．
【方法】
　体表よりコンベックス型探触子を当てて胸膜下病変を描出し，Bモードで評価した後にShear Wave Elastographyでせん断波伝搬速度V/s（m/s）を測定した．なお測定はV/s値が安定してから5回の平均値と標準偏差を調べた．超音波診断装置はGE LOGIQ S8とE9．
【結果】
V/sは，悪性疾患である肺癌（肺扁平上皮癌）においては，4.07，5.65，7.25と比較的高い値を示した．一方，良性疾患である肺炎においては，1.08，2.29と比較的低い値を示した．
【まとめ】
体表からのアプローチで胸膜下病変にGE社製のShear Wave Elastographyを臨床応用し剪断波伝搬速度を評価した．その結果，症例数は少ないが剪断波伝搬速度はV/sは悪性疾患のほうが良性疾患より明らかに高い傾向があり,良悪性の鑑別診断に対する有用性の可能性が示唆された．生検困難例においては診断の一助になる可能性がある．我々は呼吸器領域においてもパワードプラ，B-Flow color，造影超音波などの血流診断が，良悪性診断や超音波誘導下生検や肺癌治療効果判定に有用であることを報告してきた．さらにShear Wave Elastographyによる病巣の硬さの診断が付加されることにより呼吸器超音波のさらなる発展が期待される．今後症例を重ねて検討していきたい．
文献
1）浜崎直樹，今井照彦，鴻池義純，ほか.呼吸器超音波法　体表からのアプローチ　. Jpn J Med Ultrasonics. 2016;43:15-32.