Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 基礎
エラストグラフィ2

(S579)

せん断波伝播の2mode群速度計測に基づく組織粘弾性の定量的評価

Quantitative Evaluation of Tissue Viscoelasticity Estimation Method Based on 2mode Group Shear Wave Speeds

三宅 架偉, 山川 誠, 近藤 健悟, 浪田 健, 椎名 毅

Kai MIYAKE, Makoto YAMAKAWA, Kengo KONDO, Takeshi NAMITA, Tsuyoshi SHIINA

京都大学大学院医学研究科

Graduate School of Medicine, Kyoto University

キーワード :

【目的】
肝線維化診断としてせん断波伝播速度計測が行われているが,肝線維化に伴い弾性だけではなく粘性も変化する.そのため,粘弾性評価を行うことで肝線維化診断精度の向上が期待されている.しかし,一般的な粘弾性推定法であるせん断波位相速度の速度分散から推定する方法(位相速度分散法)は,ノイズに弱く,計測結果にばらつきがあった.そこで近年,せん断波伝播の際の変位と粒子速度からそれぞれ群速度を求め,この2つの群速度から粘弾性を推定する手法(2mode群速度法)が提案された[1].2mode群速度法は通常のTime-of-flight法による群速度計測が基となっているため,ロバストな粘弾性推定が可能となる.しかし,2mode群速度法単体での評価は行われているが,位相速度分散法との比較を行った報告はまだない.そこで,我々はシミュレーションにより2mode群速度法と位相速度分散法とを定量的に比較評価する.
【方法】
2mode群速度法では,せん断波伝播の際の変位と粒子速度波形を計測し,Time-of-flight法によりそれぞれの群速度を求める.この2つの群速度は硬い組織ほど速くなる一方,粘弾性媒質においては粒子速度群速度の方が変位群速度よりも速くなる.これは粒子速度は変位を時間微分したものであるため,せん断波高周波成分が強調されるためである.よって,変位群速度・粒子速度群速度と弾性係数・粘性係数の関係を予め求めておけば,粘弾性推定が可能となる.本研究では,予め多数の弾性係数・粘性係数の組み合わせでシミュレーションを行い,変位群速度・粒子速度群速度と弾性係数・粘性係数の関係をルックアップテーブルとして作成し,これを用いて粘弾性推定を行った.
【結果】
各肝線維化ステージの一様粘弾性分布モデルを作成し,せん断波伝播シミュレーションにより各モデルにおける変位波形を求めた.この変位波形に対し約-35dBのノイズを加えた(粒子速度波形におけるノイズは約-10dB).2mode群速度法と位相速度分散法でノイズを変えて弾性係数と粘性係数を推定した結果,図1のようになった.
【結論】
2mode群速度法と位相速度分散法をシミュレーションにより定量的に比較評価した結果,2mode群速度法の方が位相速度分散法よりも推定精度が良いことが確認された.また,ノイズが大きい場合でも2mode群速度法は計測ごとのばらつきが小さく,ロバストな粘弾性推定が可能であることが確かめられた.
【参考文献】
[1]N. C. Rouze, et al., Proc. IUS, 2016.