金谷 裕司, 紺野 啓, 竹下 克志, 谷口 信行, 山越 芳樹

Yuji KANAYA, Kei KONNNO, Katsushi TAKESHITA, Nobuyuki TANIGUCHI, Yoshiki YAMAKOSHI

¹自治医科大学付属病院整形外科, ²自治医科大学付属病院臨床検査医学, ³群馬大学大学院理工学府

¹Department of Orthopaedics, Jichi Medical Univirsity, ²Department of Laboratory Medicine, Jichi Medical Univirsity, ³Department of science and engineering, Gunnma University

キーワード :

【目的】
近年，ARFI（Acoustic radiation Force Impulse）を用いて，組織内にせん断波生じさせ，その伝搬速度を計測することで組織の弾性評価を可能とした，せん断波エラストグラフィーの報告が散見される．しかし，この方法の欠点として，ARFIによる熱の発生や，組織障害が懸念されている．
そこで，我々は組織表面から機械的な振動を加え，超音波カラーフロー画像を利用することで，組織内を伝搬するせん断波を可視化させた，新たなエラストグラフィー（Color Doppler Shear Wave Imaging：CDSWI法）を提案した．この新機種と，Gold standardであるARFI法（TOSHIBA）の超音波エラストグラフィー2機種を用いて，ファントム内のせん断波伝搬速度を測定し，その信頼性を調査した．さらに，CDSWI法での，生体筋肉内のせん断波伝搬速度を測定し，その信頼性を調査した．
【方法】
内部均一で，硬さの異なる4つのファントム（京都科学）を，CDSWI法と，ARFI法の2機種を用いて，表面から2cm以内の浅層と，表面から2～4cmの深さの深層に分けて，各ファントムを2人の検者で，3回測定し，検者内・検者間信頼性を調査した．
更にCDSWI法で，21～24歳の健常者（平均年齢22.4歳）24人の非利き手側における僧帽筋，棘上筋，上腕二頭筋，上腕筋を，2人の検者で時間をあけて3回測定し，検者内・検者間信頼性を調査した．CDSWI法にはエコー装置としてGE Logic7を使用した．
【結果】
検者内信頼性としてICC（1.1）を，検者間信頼性としてはICC（2.1）をSPSSにて解析した．
ファントム実験において，浅層でのCDSWI法を用いたせん弾波伝搬速度測定値のICC（1.1）は検者1：0.974，検者2：0.993，ICC（2.1）は0.988であり，ARFI法のICC（1.1）は検者1：0.984，検者2：0.964，ICC（2.1）は0.988であった．深層ではCDSWI法のICC（1.1）は検者1：0.984，検者2：0.974，ICC（2.1）は0.971であり，ARFI法のICC（1.1）は検者1：0.964，検者2：0.974，ICC（2.1）は0.988であった．CDSWI法で，ARFI法と同程度の測定値信頼性が得られた．
次に生体筋肉においては，僧帽筋のICC（1.1）は検者1：0.89，検者2：0.83，ICC（2.1）は0.86，上腕二頭筋のICC（1.1）は検者1：0.91，検者2：0.84，ICC（2.1）は0.88，棘上筋のICC（1.1）は検者1：0.75，検者2：0.68，ICC（2.1）は0.7，上腕筋のICC（1.1）は検者1：0.69，検者2：0.78，ICC（2.1）は0.81であった．
【結語】
ファントムにおいて，CDSWI法でのせん弾波伝搬速度の測定値は，ARFI法と比較しても劣らない高い信頼性が得られた．生体筋肉においても浅層筋肉では高い信頼性が得られ，今後測定条件の向上とともに，新たなエラストグラフィー機器として更に発展していく可能性は高い．