Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 基礎
生体作用

(S574)

マウスMC3T3-E1前骨芽細胞様細胞に対する低出力パルス超音波の効果

Effects of low-intensity pulsed ultrasound on mouse MC3T3-E1 preosteoblast cells

田渕 圭章, 轟 勇人, 鈴木 信雄, 平野 哲史, 竹内 真一, 椎葉 倫久, 近藤 隆, 長谷川 英之

Yoshiaki TABUCHI, Yuto TODOROKI, Nobuo SUZUKI, Tetsushi HIRANO, Shin-Ichi TAKEUCHI, Michihisa SHIIBA, Takashi KONDO, Hideyuki HASEGAWA

1富山大学研究推進機構, 2富山大学大学院生命融合科学教育部, 3富山大学大学院理工学教育部, 4金沢大学環日本海域環境研究センター, 5桐蔭横浜大学大学院工学研究科, 6日本医療科学大学保健医療学部, 7富山大学大学院医学薬学教育部

1Life Science Research Center, University of Toyama, 2Graduate School of Innovative Life Science, University of Toyama, 3Graduate School of Science and Engineering, University of Toyama, 4Institute of Nature and Environmental Technology, Kanazawa University, 5Graduate School of Biomedical Engineering, Toin University of Yokohama, 6Faculty of Health Sciences, Nihon Institute of Medical Science, 7Graduate School of Medicine and Pharmaceutical Sciences, University of Toyama

キーワード :

【目的】
超音波は,哺乳類の培養細胞に対して,分化誘導,遺伝子発現変化,アポトーシス誘導,DNA二本鎖切断等,様々な生物学的な効果があることが知られている.また,臨床において,低出力パルス超音波(LIPUS)は骨折治療に有効に利用されている.今回,我々は,マウスMC3T3-E1前骨芽細胞様細胞の細胞増殖と細胞分化に対するLIPUSの効果を検討した.また,ハイドロホンを用いて細胞培養容器内の音圧分布を測定した.
【方法】
マウスMC3T3-E1前骨芽細胞様細胞(理研BRC)を10%ウシ胎児血清含有MEMα培地(2 ml)に懸濁し,35 mm シャーレ(AGC TECHNO GLASS)に蒔き,CO2インキュベータ内で培養した(37℃).超音波骨折治療器(SAFHS4000J,帝人ファーマ)の振動子をCO2インキュベータ内に水平に設置し,超音波ゲルを挟んでその上にシャーレを置き,シャーレの下面から超音波を20分間照射した(超音波周波数1.5 MHz, DF: 20%,パルス繰り返し周波数: 1 kHz, 超音波有効強度: 30 mW/cm2).音圧を測定する時,35 mm シャーレに純水を2 ml入れ,ハイドロホン(Takeuchi et al., AIP Conf. Proc. 1433, 663-666(2012))を用いて1 mm間隔,全体で合計373点の音圧を測定した.
【結果】
今回の実験条件下では,LIPUSの超音波強度(mW/cm2)の最小と最大値は各々6.2と55.5で,中心部分の値は40.4であり,位置によって値のばらつきが大きいことが示された.一方,平均強度は31.4 mW/cm2となり,機器の超音波有効強度とほぼ一致した.細胞へのLIPUSの20分間の1回照射は,細胞数や骨芽細胞の分化のマーカーであるアルカリフォスファターゼ活性に影響を与えなかった.一方,LIPUSはERK(extracellular signal-regulated kinase)を活性化した.また,骨芽細胞の分化のマーカータンパク質であるBGLAP(bone gamma carboxyglutamate protein; osteocalcin)のLIPUSによるmRNAレベルの上昇は, ERK活性化阻害剤U0126の前処理により消失した.
【結論】
LIPUSの効果には,ERKの活性化が少なくとも一部関与することが示された.一方,LIPUSの強度はシャーレ内で均一ではなかったので,個々の細胞に対するLIPUSの効果には差があると推察される.音圧分布の均一化は,より明確なLIPUSの効果誘導に繋がると思われる.