Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 基礎
生体作用

(S573)

新規超音波ゼリーの皮膚表面形状への影響の超音波顕微鏡による観察

Effect of newly developed ultrasound gel on skin surface morphology observed with ultrasound microscope

西條 芳文, 横式 紗彩, 前田 萌, 池田 隼人

Yoshifumi SAIJO, Saaya YOKOSHIKI, Moe MAEDA, Hayato IKEDA

東北大学大学院医工学研究科医用イメージング研究分野

Biomedical Imaging Laboratory, Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
超音波診断装置による「きれいな」画像の撮像,つまり信号/雑音比の高い信号の取得は,各種臨床的イメージングモダリティーにおける超音波の高画質性をアピールするだけではなく,多様化,定量化する超音波診断装置の精度向上のためにも重要である.
従来,PZTの単結晶化などによる超音波プローブの高度化,あるいはデジタル信号処理の改善などによる高画質化については十分な成果が得られている.また,プローブと生体のインターフェイスに関して,整合層の厚みや素材の吟味は行われてきたが,生体とプローブがエコーゼリーを通してどのようにコンタクトしているかについてはあまり論じられてこなかった.
本研究では,中心周波数75 MHzの超音波顕微鏡を用い,従来の超音波ゼリーと新規開発した超音波ゼリーの塗布による皮膚表面形状への影響の違いについて観察することを目的とする.
【方法】
本多電子社製超音波顕微鏡に直径3.2 mm,焦点距離4 mm,中心周波数75 MHzのPVDF-TrFE凹面振動子を接続し,約1 Hzで振動子を機械走査することでBモード画像を撮像した.
まず,従来型ゼリーを用いて,被験者の額と頬を観察し,皮膚表面形状,表皮の厚みと真皮の画質との関係につき検討した.次に,従来型ゼリーあるいは超音波の伝送効率を高める新開発エコーゼリーを被験者の皮膚に塗布し,直後,1分後,2分後に同一部位を観察しそれぞれの画質の比較を行った.
【結果】
25~40歳の女性20名の検討において,額の皮膚表面は頬の皮膚表面と比較して凹凸が大きく角質のエコー輝度が高かった.額の表皮の厚みは128.7±8.0 μm ,頬の表皮の厚みは73.1±19.2 μmであった.真皮の画質は定性的に頬の方が優れており,毛包や皮脂腺のコントラストがより明瞭であった.従来型および新規ゼリーのそれぞれで,直後に比較して2分後の皮膚表面構造が平滑化し角質のエコー輝度が低下しており,真皮の画質がやや改善していた.この傾向は新規ゼリーにおいてより顕著であった.
【考察および結語】
額と頬の皮膚表面形状および角質と画質の関係から,表面が滑らかで角質のエコー輝度が低いほど真皮の画質が良好になると考えられた.また,過去にコラーゲンナノカプセル含有化粧品を皮膚に塗布した際に,皮膚表皮の角質表面が乳剤の影響で平滑化し,真皮の画質が向上することも確認しており,今回の実験結果もこれに矛盾しない.今回用いた新規超音波ゼリーは皮膚表面形状を平滑化し,また,角質のエコー輝度を低下させた.したがって,皮膚表面における散乱が小さくなることで超音波ビームの入射が均一になり,角質における超音波の散乱成分が減弱することで皮膚深部に透過する超音波強度が大きくなり,結果的に真皮の画質改善につながったと考えるのが妥当である.今後,臨床超音波診断にもこの新規ゼリーを用い,画質改善の確認を行っていく予定である.