Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 基礎
マイクロバブル・キャビテーション 1

(S566)

超音波照射下におけるマイクロバブルの振動と周囲分子膜形成の関係

Relationship between vibration of a microbubble and formation of the monomolecular film under ultrasound exposure

中田 真希子, 谷村 望美, 小山 大介, KRAFFT Marie Pierre

Makiko NAKATA, Nozomi TANIMURA, Daisuke KOYAMA, Marie Pierre KRAFFT

1同志社大学生命医科学部, 2同志社大学理工学部, 3Institut Charles Sadron(CNRS), University of Strasbourg

1Faculty of Life and Medical Sciences, Doshisha University, 2Faculty of Science and Engineering, Doushisha University, 3Institut Charles Sadron (CNRS), University of Strasbourg

キーワード :

【目的】
超音波とマイクロバブルを組み合わせたドラッグデリバリシステムでは,薬物を含有したバブルを薬物キャリアとして血管内投与し,抗原抗体反応等によって患部に吸着させた後,超音波照射によってバブルを振動・崩壊させ,患部のみに薬物投与を行う.生体に安全かつ効率的な薬物投与を実現するために,バブルを形成する周囲分子膜の選定や,超音波による分子膜のふるまいやバブルの振動・崩壊特性に与える影響を評価することが重要となる.本報告では,超音波によるバブルの振動が周囲膜の形成状態に与える影響について検討した.
【方法】
高速度カメラによる光学観測システムを用いてマイクロバブルの周囲膜形成を評価した.濃度1 mMの1,2-Ditetradecanoyl-sn-glycero-3-phosphocholine(DMPC)溶液で満たした実験セル中に,電気分解によって半径45-100 µmの単一バブルを発生させガラス板に付着した.バブル発生後から,バブル表面にDMPC分子が吸着し始め,周囲膜が形成される過程をバブルとガラス間の接触角を計測することで評価した.次に,超音波によるバブルの径方向振動が分子膜形成に与える影響について検討した.実験セル底面に共振周波数38.8 kHzの振動子を接着し,セル内に定在波が形成される様液量を調整した.超音波非照射時においてバブル表面への分子の吸着が飽和する1800 s後に超音波パルスを照射し,接触角の時間変化を計測した.照射超音波の条件(音圧振幅およびサイクル数)を変化し,接触角の変化との関係について検討した.
【結果】
図より,いずれのサイズのバブルにおいてもバブル発生後(t = 0 s)からバブル表面にDMPC分子が吸着し始め,時間と共に指数関数的に接触角(すなわち表面張力)は減少し,周囲膜が形成された.t = 1800 sの超音波照射(図中網掛け部)によって,接触角は一時的に増加し,照射後に再び時間と共に減少した.また,超音波による接触角の増加量は照射音圧振幅およびサイクル数の増加によって促進された.これらの結果より,超音波によるバブルの振動によってバブル表面に吸着したDMPC分子が脱離することがわかった.
【結論】
超音波によって引き起こされるマイクロバブルの振動により,バブル表面に吸着した分子の脱離が観測された.脱離する分子量はバブルの振動振幅に依存することから,照射音波の各パラメータ(音圧振幅,サイクル数,周波数)によってバブルから放出される分子量を制御できる可能性が示唆された.