高水 藍, 山本 祐華, 板倉 敦夫

Ai TAKAMIZU, Yuka YAMAMOTO, Atsuo ITAKURA

¹順天堂大学医学部順天堂医院産婦人科, ²順天堂大学医学部附属浦安病院産婦人科

¹Department of Obstetrics and Gynecology, Juntendo University Faculty of Medicine, ²Department of Obstetrics and Gynecology, Juntendo University Urayasu Hospital

キーワード :

【目的】
胎児超音波検査で先天性肺気道形成異常（congenital pulmonary airway mal
formation:以下，CPAM）と診断された場合，通常CPAM volume ratio（CVR
）で評価される．症例によっては妊娠後期に病変の計測が困難になるほど病変が縮小することがある一方で，生後早期に手術が必要となることがある．待機手術が可能であれば，高次医療施設以外での分娩も可能となる．CPAMの出生前評価により緊急手術の準備や生後早期の手術治療の要否を予測できるかどうかを検討した．
【方法】
2012年から2017年に当院の胎児超音波検査においてCPAMと診断され，当院で周産期管理を行った22症例を対象とした．生後早期（1か月以内）に手術が必要であった群（早期）5例，待機的手術が可能だった群（後期）17例について，推定体重に対する腫瘍体積（volume/EFW:（CPAMの体積（cm³）＝腫瘍長径（cm）x　短径（cm）x　高さ（cm）x　0.52）/EFW），CVR（volume/頭囲）を縦断的に計測し，出生後のCT所見や手術までの日数で予後評価した．
【結果】
診断週数は，早期群20.43±2.18，後期群22.32±2.13と有意差は認めなかった．診断時のvolume/EFWは早期群で有意に高値であった（p=0.015: 早期群4.33±2.82，後期群1.59±1.39）．また診断時のvolume/EFWは出生後のCTによる病変の体積と有意な相関を認めた（p＜0.01，r=0.61）．早期手術を予測する診断時のvolume/EFWのカットオフ値は0.0205（AUC 0.85，感度0.833，特異度0.687）であった．診断時のCVR, 分娩前のvolume/EFWやCVRでは早期群，後期群で有意差を認めなかった．妊娠34週以降で病変の計測が困難となった症例は36％で認めたが，出生後病変が確認できなかった症例は1例のみで，手術が必要なかった症例は2例のみであった．
【結語】
胎児診断されたCPAMにおいて，胎児超音波検査による診断時のvolume/EFWは生後早期手術の予測が可能であることが考えられ，分娩場所の選択に有用な指標となる．また妊娠後期に病変部の測定が困難となる場合でも結果的に手術が必要となる症例は多いため，家族への説明に留意する必要がある．