鵜飼 真由, 上野 琢史, 山田 拓馬, 竹田 健彦, 田野 翔, 宇野 枢, 鈴木 徹平, 岸上 靖幸, 梶山 広明, 小口 秀紀

Mayu UKAI, Takuji UENO, Takuma YAMADA, Takehiko TAKEDA, Sho TANO, Kaname UNO, Teppei SUZUKI, Yasuyuki KISHIGAMI, Hiroaki KAJIYAMA, Hidenori OGUCHI

¹トヨタ記念病院産婦人科, ²名古屋大学産婦人科

¹Department of Obstetrics and Gynecology, TOYOTA memorial hospital, ²Department of Obstetrics and Gynecology, Nagoya University

キーワード :

【緒言】
卵巣腫瘍の良悪性の鑑別には，嚢胞性か充実性か，腫瘍内充実成分の形態や血流の有無が重要とされてきたが，従来のドプラ法では血流の評価は不明瞭に終わることも多かった．Superb Microvascular Imaging（SMI）は従来のDoppler法と比較して高感度，高分解能，高フレームレートかつノイズが少ないという利点を有しており，これまで検出困難であった低流速の血流も，非造影下に可視化する優れた血流表示法である．
【目的】
今回，我々は卵巣腫瘍の鑑別にSMIを用いた血流評価を行い，臨床的有用性について検討した．
【対象と方法】
2015年4月から2017年2月までの間に当院で診察した充実成分を含む良性卵巣腫瘍2例，境界悪性卵巣腫瘍8例，悪性卵巣腫瘍21例，クルッケンベルグ腫瘍4例を対象とし，TOSHIBA Aplio300または500でSMIを施行し，腫瘍形態や腫瘍の血流を評価した．最終診断は病理組織診断で行った．
【成績】
良性腫瘍の中で悪性との鑑別が困難な充実性腫瘍では，充実部は点状エコー像を呈したが全例で明らかな血流を認めなかった．境界悪性腫瘍の中で壁在結節内や嚢胞隔壁にColor Doppler Imaging（CDI），Advanced Dynamic Flow（ADF），Power Doppler Imaging（PDI）で血流を認めなかったが，SMIでのみ血流を認めた症例は3例あり，境界悪性腫瘍では低流量の血流が存在することが示唆された．悪性卵巣腫瘍では充実性腫瘍や壁在結節を伴う腫瘍においてCDI，ADF，PDIで血流を認めたが，SMIでは更に詳細な腫瘍内に流入する樹枝状血流を認めた．悪性卵巣腫瘍の方が境界悪性と比較して血流量が多く，高流量の血流が存在する可能性が示唆された．クルッケンベルグ腫瘍は胃癌2例とS状結腸癌2例であったが，粘液産生を反映した多房性充実性腫瘍の形態で，卵巣癌と比較すると腫瘍辺縁は比較的明瞭であったが，血流形態では卵巣原発の悪性卵巣腫瘍との明らかな差は認めなかった．
【結論】
SMIは，従来の表示法では描出できなかった低流速の血流も可視化できるため，従来の腫瘍の形態学的な鑑別方法に加えて，血流評価を追加することで，正診率をあげる可能性が示唆された．産婦人科領域における報告は少なく，今後も更なる症例の集積と検討が期待される．