小林 奈津子, 熊田 卓, 多田 俊史, 豊田 秀徳, 金森 明, 丹羽 文彦, 小川 定信, 大栗 拓真, 神山 直久

Natsuko KOBAYASHI, Takashi KUMADA, Toshifumi TADA, Hidenori TOYODA, Akira KANAMORI, Fumihiko NIWA, Sadanobu OGAWA, Takuma OGURI, Naohisa KAMIYAMA

¹大垣市民病院消化器内科, ²大垣市民病院画像部門, ³GEヘルスケア・ジャパン株式会社超音波製品開発

¹Gastroenterology and Hepatology, Ogaki Municipal Hospital, ²Imaging diagnosis, Ogaki Municipal Hospital, ³Ultrasound Product Development, GE Healthcare Japan

キーワード :

【目的】
脂肪肝を定量的に診断する方法としてControlled Attenuation Parameter（CAP）が普及しつつあるが，Bモード画像が得られず専用機が必要となる．一方，脂肪肝の定量はより正確で侵襲性のないMRI- proton density fat fraction（PDFF）に置き換えられつつあるが（Duali PS, et al. J Hepatol 2016），高額な機器を必要とし一般的でない．今回われわれは一般の超音波装置にも装着可能なUltrasound-guided Attenuation Parameter（UGAP）を用いた減衰定数（AC: attenuation coefficient）を測定し，MRI-PDFFと比較したので報告する．
【対象，方法】
対象は2016年1月から2017年9月までの間にACの測定とPDFFの測定が同時期に行われた466例中，ウイルス性肝疾患を除いた126例である．性別（男性/女性）：59/67例，年齢：65（54-71）歳，BMI：25.5（23.3-28.8）（kg/m²）であった．超音波装置はGE社LOGEQ S8とE9を用い，ACは減衰率が既知の超音波ファントムから取得しておいたデータを利用して，超音波装置の音場特性をキャンセルし，減衰量の情報のみを抽出するアルゴリズムを採用した．具体的には，検査者がBモード上で肝実質部に関心領域を設置し，その部分の深度方向の減衰勾配を最小二乗法により直線近似して減衰係数を測定した．MRI装置はGE社 Discovery MR750Wを使用した．PDFFのカットオフは既報（Imajo K, et al. Gastroenterology, 2016）にしたがい，脂肪化grade ≧1，≧2，≧3をそれぞれ5.2％（肝脂肪化5％に相当），11.3％，17.1％とした．なお，連続変数は中央値（四分位範囲）で表した．
【結果】
（1）PDFF値は9.2（5.6-16.1）％，AC値は0.67（0.60-0.75）dB/cm/MHzであった．（2）PDFFとACの相関係数は0.767（p＜0.001）と強い相関が認められた．（3）PDFFから推定された各脂肪化gradeのROC解析による診断能（AUROC）は，grade≧1の場合0.922（95％CI：0.870-0.973）で，カットオフ0.60の時，感度85.0％，特異度88.5％であった，grade≧2の場合は0.874（95％CI：0.814-0.934）で，カットオフ0.69の時，感度82.7％，特異度81.1％であった．grade≧3の場合は0.892（95％CI：0.835-0.949）で，カットオフ0.69の時，感度96.7％，特異度70.8％で，いずれも比較的高い診断能を示した．（4）BMI：25 kg/m²以上の症例（n=70）に限ったサブグループ解析においても，PDFFとACの相関係数は0.77（p＜0.001）と強い相関が認められた．
【考察・結論】
UGAPを用いたAC値はPDFF値と強い相関が認められ各脂肪化gradeも比較的高い診断能で，脂肪化5％の検出は可能と考えられた．さらに肥満例においてもACとPDFFは高い相関が認められた．今後，より非侵襲的かつ簡便な脂肪肝の定量評価方法としての普及が期待される．