藤原 裕大, 黒田 英克, 阿部 珠美, 大栗 拓真, 野口 幸代, 神山 直久, 滝川 康裕

Yudai FUJIWARA, Hidekatsu KURODA, Tamami ABE, Takuma OGURI, Sachiyo NOGUCHI, Naohisa KAMIYAMA, Yasuhiro TAKIKAWA

¹岩手医科大学内科学講座消化器内科肝臓分野, ²GEヘルスケア・ジャパン株式会社超音波製品開発部

¹Division of Hepatology, Department of Internal Medicine, Iwate Medical University, ²Ultrasound GenKeral Imaging, GE Healthcare

キーワード :

【目的】
非侵襲的脂肪肝定量化を目的とした，超音波減衰の定量計測に関する報告が散見される（FibroScan CAP; De Ldinghen V et al. J Gastroenterol Hepatol. 2016）. しかし，CAPは断層像の同時観察ができず，関心領域に肝外領域が含まれる可能性, また，肝線維化因子による測定値の乖離が指摘されている．今回我々は，超音波減衰量パラメーター（UGAP: ultrasound-guided attenuation parameter）を用いて慢性肝疾患の超音波減衰係数（Attenuation coefficient: AC（dB/cm/MHz））を測定し， UGAPの測定信頼性，肝脂肪化診断能に関しCAPとの前向き比較試験で検証した．また，肥満外科手術を施行され複数回肝生検を施行したNASH例に対し，病理所見とACの経時的推移を観察し，脂肪肝の経過観察指標としての有用性を評価した．
【対象と方法】
対象は，2016年4月から2017年9月に本研究に同意を得て肝生検検査と同日にUGAPとCAPを施行した慢性肝疾患163例（HCV 85例，NAFLD 78例）．平均年齢は60.7歳．男性91例，女性72例．機種はLOGIQ E9（GE Healthcare）．探触子はC1-6（凸型）を使用．送受信周波数を4.0 MHzとして肝S5のB-mode像を取得し，RF dataを解析用PCに転送．Reference phantom method（Yao LX et al. Ultrason Imaging. 1990）に準拠し，肝実質の総体的なACを推定した．Steatosis gradeはS0：5％未満，S1:5-33％，S2:34-66％，S3:67％以上とし，UGAPならびにCAPの測定成功率，検者内・検者間信頼性，肝脂肪化診断能を比較検討した. 次に肥満外科手術を施行したNASH 11例（平均年齢40.1歳．男性5例，女性6例）に対し，術中，術後6ヶ月，12ヶ月に肝生検とUGAPを施行し，病理所見やACの変化を比較検討した．本検討は院内倫理委員会の承諾を得ている.
【結果】
（1）UGAPとCAPの測定成功率は100％, 95.5％であった. UGAPの級内相関係数（1, 1）/（2, 1）は, 0.86/0.84であった.（2）S grade別のACの中央値は，S0（57）/S1（70）/S2（26）/S3（10）: 0.49/0.56/0.66/0.72 dB/cm/MHzで, 肝脂肪化に従い高値を示した（p＜0.0001）. ACと肝脂肪割合，CAP値の間に有意な相関を認めた（r=0.77, r=0.65, p＜0.0001）．（3）UGAPのAUROCは，S1/S2/S3: 0.919/0.957/0.960で，いずれもCAPより優れた結果を示した．肝脂肪割合5％以上を識別するACの最適なCut off値は, 0.53 dB/cm/MHz（感度 86.2％, 特異度 87.2％）であった.（3）肝線維化stage別のACは，F0/F1/F2/F3/F4: 0.54/0.56/0.54/0.56/0.53 dB/cm/MHzで, 肝線維化とAC間に相関は認めなかった.（4）術中/術後6ヶ月/12か月の肝脂肪化割合の中央値は21.36/5.25/5.33％，同時期のACは0.61/0.47/0.49 dB/cm/MHzで両者の並列した変化を認めた．
【結語】
UGAPの優れた肝脂肪化診断能が示された．本法は汎用型超音波装置に搭載されB-mode下で使用可能なことから，脂肪肝のスクリーニングや経過観察に応用可能である．