英文誌(2004-)
奨励賞 基礎
奨励賞 基礎
(S553)
音響力学治療用集束超音波照射における活性酸素生成領域の音響化学発光による評価
Region evaluation of reactive oxygen species by sonochemiluminescence during focused ultrasound exposure for sonodynamic treatment
益子 大作, 西高 慎也, 岩崎 亮祐, 梅村 晋一郎, 吉澤 晋
Daisaku MASHIKO, Shinnya NISHITAKA, Ryousuke IWASAKI, Shin-Ichiro UMEMURA, Shin YOSHIZAWA
1東北大学大学院医工学研究科, 2東北大学大学院工学研究科
1Department of Biomedical Engineering, Tohoku Univ., 2Department of Communications Engineering, Tohoku Univ.
キーワード :
【背景・目的】
強力集束超音波を用いた音響力学治療は,体外より超音波を集束させ,焦点付近に生じる活性酸素種(ROS: Reactive Oxygen Species)の酸化作用でがんを壊死させる低侵襲な治療法である.集束超音波の焦点付近では,超音波の圧力でキャビテーション気泡が生成し,体積振動を繰り返す.その際に気泡内部の気体が断熱的に圧縮されて高温高圧の反応場が現れ,水分子等が熱分解することで,ROSが生じる.ROSは強い酸化作用は治療効果をもたらすが,正常細胞にも悪影響を及ぼすため,がん領域のみに生成することが課題である.また,キャビテーション気泡が生成する焦点領域はがん領域に比べて一般的に小さいため,治療時間が長いという欠点もある.そこで本研究では,ROSを局在化させつつ高効率に生成できる超音波照射方法の検討を行った.
【方法】
128素子からなる治療用アレイトランスデューサを用いて,0.7 mMのルミノールが浸潤したポリアクリルアミドゲルを4時間脱気し,超音波を照射した.ルミノールの発光にはROSが起因していると考えられており,発光の様子をカメラで撮影し,発光領域を軸対称と仮定してROSの生成領域の近似体積を求めた.また,超音波は1 MHz,50 kW/cm2,100 sのキャビテーション生成波(Trigger pulse,以下T波)に直後に同じ周波数で250 W/cm2,10 msの気泡維持波(Sustain burst,以下S波)を照射するシーケンスを3 Hzで90回繰り返し,焦点走査方法の異なる以下の4種類について調べた.1つ目はT波の直後にS波を照射するもの(TS).2つ目は幾何焦点から上下3 mm離れた2点に,まずT波を交互に入射し,その後S波を25 sずつ交互に照射するもの(TTSS).3つ目に,TTSSと同じ2点に,TSを交互に照射するもの(TSTS_6).4つ目は幾何焦点の上下1.5 mmの2点にTSを交互に照射するもの(TSTS_3).
【結果・考察】
図は撮影結果で,点線は幾何焦点の到達深度である.超音波は図の左から右へと伝搬しており,全ての結果で幾何焦点から遡ってROSが生成していることが確認できた.焦点を2点走査した照射法ではTS照射の倍エネルギーを投与しており,TSTSの2つではエネルギー効率と時間効率の向上が確認できた.また,TSTS_3の方が6に比べ生成領域が効率は向上しており,領域がほぼ連続となった.以上のことからT波とS波の間の時間を短くし,走査間隔は3 mm前後とすることで,時間効率の向上及び治療領域の連続性につながると示唆された.