池田 隼人, 長岡 亮, LAFOND Maxime, 吉澤 晋, 岩崎 亮祐, 前田 萌, 梅村 晋一郎, 西條 芳文

Hayato IKEDA, Ryo NAGAOKA, Maxime LAFOND, Shin YOSHIZAWA, Ryosuke IWASAKI, Moe MAEDA, Shin-Ichiro UMEMURA, Yoshifumi SAIJO

¹東北大学大学院医工学研究科, ²東北大学大学院工学研究科

¹Department of Biomedical Engineering, Tohoku University, ²Department of Communications Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
近年, 無心体双胎（TRAP症候群）において心臓がない胎児への血流を強力集束超音波（HIFU）の照射によって閉塞させることに成功し, 非侵襲的な血管閉塞手法として注目を集めている. キャビテーション気泡によって加熱効果が増強されることが知られているが, 従来の時間フィルタでは血流との分離が困難であった. 一方, 特異値分解（SVD）フィルタは時空間的性質から分離が可能なフィルタである. 本報告ではパケット数が少ない場合に用いられるPolynominal フィルタ（時間フィルタ）と, SVDフィルタ（時空間フィルタ）を適用し, キャビテーション気泡生成下における血流イメージング精度を比較した.
【対象と方法】
対象をゲル試料とし, 2次元アレイトランスデューサ（駆動周波数:1.0 MHz, チャンネル数:128 ch）から短時間高強度のHIFUを繰り返し周波数50 Hzで10回照射した. この間に送信周波数3.0 MHz, フレームレート 1.0 kHzの高速超音波イメージングによってキャビテーション気泡信号を18 Frame分取得した. 次に対象を血流ファントム（超音波散乱体を含む）とし, HIFU非照射下で同様にして組織・血流信号を取得した. ゲル界面における強反射の影響を避けるために, ゲル内部（ROI）のキャビテーション成分のみを組織・血流信号と重ね合わせHIFU治療中の受信信号を再現した. HIFUを10回照射し得られた合計180 Frameの受信信号に対して, Polynominal フィルタとSVDフィルタによってそれぞれ組織・キャビテーション成分を除去し, 血流のパワードプラ画像を取得した.
【結果と考察】
図（a）-（c）に分離前のB-mode画像と各フィルタによる分離後のパワードプラ画像を示す. Polynominal フィルタでは組織に対する血流のコントラスト比が1.95 dBだったのに対し, SVDフィルタでは9.77 dBであった. キャビテーション気泡はHIFUの幾何焦点付近にのみ生成し, 血流と異なる空間的性質を持つため時空間フィルタによる分離が可能であると考えられた. 以上より, SVDフィルタによって組織, キャビテーション成分を除去し, キャビテーション気泡生成下においても血流のイメージングが可能であることが示された.