Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

共同企画
日本超音波検査学会との共同企画 泌尿器科専門医が検査士に求めるもの・検査士が提供できるもの

(S549)

陰嚢の疾患―急性陰嚢症―

Diseases of the ScrotumーAcute scrotumー

渡辺 秀雄

Hideo WATANABE

小張総合病院検査科

Department of Clinical Laboratory, Kobari General Hospital

キーワード :

【はじめに】
急性陰嚢症には精巣捻転症,精巣炎,精巣上体炎,精巣垂・精巣上体垂捻転症などが含まれるが,中でも精巣捻転症は緊急性が高く臨床医が最も知りたい疾患となる.そのため他の疾患との鑑別が重要で,正確で迅速な判断が要求される.今回は自験例をもとに臨床医に提供できる所見について提示する.
【症例】
10才代男性.既往歴は特になし.
【主訴】
夜間睡眠中に突然の右陰嚢痛を自覚し,救急外来に受診された.
【検査依頼内容】
急性陰嚢症.
【臨床症状】
悪心,嘔吐を伴い,右陰嚢皮膚は発赤,腫脹していた.右精巣は腹側に挙上し,精巣挙筋反射は消失していた.
【生化学検査】
WBC:10,600/μl,CRP:0.10mg/dl,尿蛋白(-),尿潜血(-).
【超音波検査】
右精巣は球状化しており軸偏位を認め,精索は著名に腫大していた.ドプラ法では左精巣内にパラパラと血流シグナルを確認できるが,右精巣内には明らかな血流シグナルは確認できなかった.
【経過】
精巣捻転症を疑い,直ちに緊急手術が施行された.手術所見では精巣は半回転しており,全体的に硬く暗灰色を呈していた.捻転を解除し精巣の状態を確認したところ,正常の色調と硬さに戻ったため精巣温存可能と判断し,精巣は摘出せず両側ともに精巣固定術が施行された.
【まとめ】
精巣捻転症の鑑別にはドプラ法による血流の確認が有用で,左右の陰嚢を同一設定条件で比較し観察することが大切である.またBモードによる所見も重要で,精索が捻転している所見(whirlpool sign)を直接確認できれば診断的となる.精巣のviabilityに関しては,精巣実質エコーが低エコー化し不均一に描出された場合は精巣が壊死に陥っている可能性が考えられる.判断に苦慮する場合は,むやみに時間をかけるのではなく,その旨臨床医に報告し他のモダリティに委ねることも必要である.