Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

共同企画
日本脳神経超音波学会との共同企画 脳神経超音波最前線

(S540)

内頸動脈狭窄に対するパルスドプラ法を用いた新たな評価法

A new evaluation method using the pulse-Doppler ultrasound for internal carotid artery stenosis

竹川 英宏, 岡部 龍太, 豊田 茂, 平田 幸一, 髙田 悦雄

Hidehiro TAKEKAWA, Ryuta OKABE, Shigeru TOYODA, Koichi HIRATA, Etsuo TAKADA

1獨協医科大学神経内科(脳卒中部門), 2獨協医科大学病院超音波センター, 3獨協医科大学心臓・血管内科, 4獨協医科大学神経内科

1Stroke Division, Department of Neurology, Dokkyo Medical University, 2Center of Medical Ultrasonics, Dokkyo Medical University Hospital, 3Department of Cardiovascular Medicine, Dokkyo Medical University, 4Department of Neurology, Dokkyo Medical University

キーワード :

【はじめに】
 頸動脈エコーによる内頸動脈(ICA)起始部狭窄診断は,面積狭窄率,径狭窄率のほか,パルスドプラ法で得られる血流速度を用いた診断法がある.とくに収縮期最高血流速度(PSV)による狭窄率診断は広く利用されており,PSVが200から230cm/sec以上を示す場合,脳血管撮影のNASCET狭窄率70%以上に相当することが知られている1).一方,パスルドプラ波形で得られる血流波形から収縮期加速時間(AcT)を求めることが可能であり,本評価を用いた狭窄率診断が試みられている.
【AcTを用いた内頸動脈起始部狭窄率診断】
 演者ら2)は127血管を対象に,ICAのAcT(ICA-AcT)を分岐部から約3cmで計測し,ICA分岐部のPSVとの関係をみた.その結果,ICA-AcTはPSVと有意な正の相関が得られ(r=0.62),PSV 150cm/sec以上の診断は150msをカットオフとすると,感度92.3%,特異度92.1%であった.同様に,田村ら3)は266血管を対象に検討を行っている.その結果においてもICA-PSVはPSVと有意な正の相関(r=0.62)を示し,110msをカットオフとした場合,NASCET 70%以上の狭窄は感度100%,特異度75.9%であると報告している.さらに神谷ら4)は頸動脈ステント留置術(CAS)155症例を対象にICA-AcTとPSVについて解析を行い,CAS例においても有意な正の相関があることを示した(r=0.346).またCAS再狭窄とされるPSV 300cm/sec以上は,107.7msをカットオフとすると感度85.7%,特異度88.4%であった.
 一方,演者らはICA-AcTを総頸動脈(CCA)のAcTで除した値をAcT ratioと定義し,ICA起始部狭窄の診断が可能かについても検討を行い,PSV 150cm/sec以上はAcT ratioは1.5以上,200cm/sec以上では2.0以上を示すことを報告し,さらにその相関係数はICA-AcTよりも高値であった(r=0.82)2).また,265血管を対象にECST 65%以上狭窄の診断を試みた結果5),AcT ratioはICA狭窄率と有意な正の相関があり(r=0.60),そのカットオフを1.5とした場合の診断率は,感度90.0%,特異度93.5%であった.一方,神谷ら4)のCAS例の検討では,AcT ratioのカットオフを2.35とした場合,感度85.7%,特異度95.2%でPSV 300cm/sec以上の診断が可能であった.
【最後に】
 ICA起始部狭窄診断に対してICA-AcTやAcT ratioを用いた検討は少ない.しかし,全周性石灰化病変では直接再狭窄部のPSV計測および面積・径狭窄率の算出が不可能であり,CCAとICAのPSV比などを参考に診断がなされる.このような例において,AcTおよびAcT ratioは新たな指標として有用であると考えられる.
【参考文献】
1)AbuRahma AF, et al. J Vasc Surg 2011; 53: 53-60.
2)竹川英宏, 他. Neurosonology 2009; 22: 79-82.
3)田村啓和, 他. J Jpn Coll Angiol 2011; 51: 365-371.
4)神谷雄己, 他. Neurosonology 2015; 28: 54-58.
5)Takekawa H, et al. J Med Ultrason(2001)2014; 41: 63-67.