Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・技を究める 運動器エコー
運動器エコー 技を極める

(S535)

難治性疼痛に対するHydrorelease

Hydrorelease for intractable pain

宮武 和馬

Kazuma MIYATAKE

1横浜市立大学医学研究科運動器病態学教室, 2相模原協同病院整形外科

1Orthopedics, Yokohama City University, 2Orthopedics, Sagamihara Kyodo Hospital

キーワード :

整形外科医の日々の診療は,手術あるいは内服が中心である.ただ,中には難治性で効果的な治療が確立されていない障害や,CT,MRIでも異常所見がなく,疼痛が改善しない症例も多く存在する.我々はそのような症例を前にすると,「高齢だから」あるいは「使いすぎ」「神経の痛みだから仕方ない」などという言葉で患者と自分を納得させ,「痛み止め」「リハビリ」で漫然と治療を行うことが多い.しかし,超音波診療が普及し,超音波ガイド下のinterventionを利用し診断と治療を同時に行う「診断的治療」が可能になり,このような障害も診断・治療が可能になってきた.また,病態の解明にも一歩ずつ近づいている.その中でも超音波ガイド下で結合組織に薬剤を注射する”Hydrorelease”は近年注目を集めている.特に神経の周辺にHydroreleaseを行うperineural Hydroreleaseは効果的である. 今回は難治性疼痛におけHydroreleaseについて症例を交えながら紹介する.
神経由来の痛みであれば,野球を中心としたスポーツ選手では尺骨神経,胸郭出口症候群の痛みが多く,日常診療では橈骨神経・正中神経を中心とした神経の障害に遭遇することが多い. 尺骨神経においては,たとえ脱臼を伴うケースであってもHydroreleaseが著効する例がある.また手根管症候群だけでなく,さらに近位での正中神経の疼痛が出現する症例や,まるで外側上顆炎のような橈骨神経の障害も存在する.そのようなケースであれば,圧痛部位を詳細に触診し最大圧痛部を探し出し,神経の伸長テスト(NTT:Nerve Tension Test)でさらに診断を確定させる.そして障害部位に応じたperineural Hydroreleaseを行う. また,腕神経叢周囲の神経鞘腫や,術後の神経障害なども今までは内服で治療をしていたが,perineural Hydroreleaseが著効するケースが少なからず存在する.難治性と呼ばれていた障害もHydroreleaseにより治療が可能となり,病態も解明されてくることで新たな治療が見つかるかもしれない.
症例により効果の持続期間は様々であり,今後の検討が必要であるが,病態解明や治療の糸口になることは間違いないであろう.