Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・技を究める 血管エコー
血管エコー2 腹部大動脈瘤診療に超音波検査ができること

(S519)

ステントグラフト留置術前後におけるエコー評価ポイント

Ultrasound evaluation before and after aortic stentgraft implantation : check points

山本 哲也, 岩永 史郎

Tetsuya YAMAMOTO, Shirou IWANAGA

1埼玉医科大学国際医療センター中央検査部, 2埼玉医科大学国際医療センター心臓内科

1Central Laboratory, Saitama Medical University International Medical Center, Saitama, Japan, 2Cardiology Department, Saitama Medical University International Medical Center, Saitama, Japan

キーワード :

【はじめに】
腹部大動脈瘤に対する治療法は,人工血管を用いる開腹術とステントグラフトを用いる血管内治療に大別される.ステントグラフト留置術は近年の医療が目指す低侵襲化によって急速に普及している.この治療前後の評価は造影CTで行われることが多いが,エコー検査は造影CTで得られない有用な情報をもたらす.
ステントグラフト留置術前後におけるエコー検査の役割,観察のポイント,検査のコツや留意点について解説する.
【術前評価】
まず,ステントグラフトの各デバイスの適応基準を満たしているかを確認する. 1.手術を必要とする瘤径であること. 2.腎動脈分枝と瘤中枢端までの間に正常血管の部位が15mm以上あり,蛇行が強くないこと. 3.瘤より末梢側の動脈に正常血管が10mm以上あり,蛇行が強くないことなどが条件となる.次に,カテーテルのアクセスルートを確認する.本治療法のデバイスは太いため,カテーテル穿刺部位から瘤までの血管内径や血管壁性状を確認することも大切である.穿刺部位の高度な石灰化やアクセスルートの狭窄や閉塞を持つ症例もある.これらは造影CT検査でも確認できるが,解像度が高く,血流情報をリアルタイムに確認できる点がエコー検査の利点と言える.
【術後評価】
人工血管周囲へのエンドリーク,瘤径変化,ステントグラフト周囲の血流を確認することが大切である.
1)エンドリークの検出
エンドリークがない症例では瘤壁とステントグラフト内腔間の血流が遮断され,血栓化や瘤径縮小が認められる.一方,エンドリーク例では瘤径の拡大や破裂の合併頻度が高く,遠隔成績は不良になる.エンドリークの診断を造影CT検査で行う施設が多いが,リークが“どの部位から”“どの程度で”などの詳細な血流情報を得るためには,エコー検査の方が有用性は高い. エンドリークは発生部位によりⅠ~Ⅳ型の4つに分類される.通常,Ⅰ型とⅢ型ではステントグラフト側,Ⅱ型では血管壁側から瘤内へ流入する血流を観察できる.診断には大動脈瘤の内部性状を細かく観察することが必要である.エンドリークのない症例では瘤内部が完全に血栓像を示すが,エンドリーク例では境界明瞭な低輝度,あるいは無エコー領域を認めることが多い.限局性の流動エコー(可動する微細な点状エコー)を検出することが観察のコツである.
2)瘤径の計測
短軸像で動脈瘤の最大部を同定し,最大短径を計測する.瘤径の計測精度を向上させるために,多断面を観察して,瘤の走行を立体的にイメージし,瘤の最大部位を適確に捉えることが必要である.また,計測を行う時相を統一し,各断面で外膜の外側-外側を計測する.これによりCT検査で求めた瘤径の計測値と有意な差がない計測ができる.
3)その他
ステントグラフト周囲の血流を観察することに加え,腎動脈などの主要な分枝血管やステントグラフト内の血流についても確認する.ステントグラフト内に血流が検出されない場合,グラフトの閉塞を疑う.また,モザイク血流が検出された際には,狭窄を疑う.この場合,ドプラ法で血流速度を測定し,最高血流速度が2.0m/sを超える場合にはグラフト狭窄と判定する.