Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・技を究める 血管エコー
血管エコー1 さまざまな血管診療に超音波検査を活かす

(S514)

下肢静脈エコーなのに神経を見る?―小伏在静脈瘤術後の神経障害を防ぐには―

Needs of nerves ultrasounds imaging for venous duplex scanning

宮井 美恵子, 増山 里枝子, 工藤 敏文, 広川 雅之

Mieko MAYA, Rieko MASHIYAMA, Toshifumi KUDOS, Masayuki HIROKAWA

1東京医科歯科大学血管外科バスキュラーラボ・検査部, 2東京医科歯科大学血管外科, 3お茶の水血管外科クリニック

1Vascular Lab, Clinical Laboratory Center, Tokyo Medical and Dental University, 2Vascular Surgery, Tokyo Medical and Dental University, 3Ochanomizu Vascular & Vein Clinic

キーワード :

 一般に下肢静脈エコー検査といえばDVTに対する検査であるようなイメージが強く,実際,DVTに比べ下肢静脈瘤のエコー検査に関する情報は非常に少ない.しかし,近年,下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術が保険適用された事によって下肢静脈瘤専門の医療機関が増え,下肢静脈瘤エコー検査の需要が高まっている.
 下肢静脈瘤のエコー検査は一次性下肢静脈瘤の弁不全の範囲と逆流源の評価や術前のマーキングに非常に有用である.さらに,静脈撮影やCT検査と較べ陳旧性や小さい血栓の描出能に優れているため,治療の適応を左右するDVTの既往の評価にも大きな威力を発揮する.しかし,これらは下肢静脈瘤エコー検査を行う検査者には今や基本的な技術である.本講演では従来の下肢静脈瘤エコー検査に加えて下腿の神経,特に小伏在静脈瘤の治療に関連する神経の評価法を紹介する.
 近年,下肢静脈瘤の治療法として血管内焼灼術が標準的治療となっている.しかし,小伏在静脈に対する血管内焼灼術は,術後に神経障害を起こす危険性があり注意が必要である.術後の神経障害を回避するために,術前にエコー検査で神経の走行を評価しておくことが重要である.エコー検査上,神経繊維は低エコー,神経外膜は高エコーで,末梢神経は蜂の巣状に描出される.内部のblack spotと呼ばれる低エコー領域は血管と違い体位や圧迫では変形しない.小伏在静脈瘤の血管内焼灼術において神経障害を起こす可能性のある神経は,中枢側では脛骨神経,総腓骨神経,内側腓腹皮神経,末梢側では腓腹神経である.これらの神経と静脈との位置関係をエコー検査で詳細に把握しておくことによって,神経障害を減らすことが可能である.
 下肢静脈瘤の治療は低侵襲化し,施行する医師も多診療科にわたるようになった.このような現状においてスクリーニング段階での検査,術前のエコー評価は得られる情報が多く静脈診療において非常に重要な役割を果たすと考える.