Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.677(2017年)→0.966(2018年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・技を究める 産科エコー
産科エコー 技を究める:産科エコー

(S509)

胎児インターベンションに必要な超音波手技―考え方, 実践および教え方

Ultrasound scanning technique for fetal intervention - conception, practice and education

宮下 進

Susumu MIYASHITA

1獨協医科大学総合周産期母子医療センター産科部門, 2獨協医科大学産科婦人科学講座

1Division of Maternal and Fetal Medicine, Perinatal Medical Center, Dokkyo Medical University, 2Department of Obstetrics and Gynecology, Dokkyo Medical University

キーワード :

 胎児を対象としたインターベンションには羊水穿刺,臍帯穿刺,胎児輸血,胎児胸腔・腹腔穿刺,胎児シャント術,胎児鏡下治療などがあるが,いずれも超音波断層法を併用することで安全な穿刺手技が可能となる.ところが胎児超音波検査が発達した現在においても,穿刺にともなう超音波手技には通常と異なる考え方とコツがあることが認識されているとは言いがたい.大学病院など教育機関においても非効率なトレーニング法や教え方がよく見られるのは残念である.本講演では,超音波断層法下穿刺の考え方,実践および経験が乏しい術者への教育について考察したい.
 超音波断層法を併用した胎児インターベンションのトレーニングには以下のステップを進める.
(1)穿刺デバイスの特性と音場の理解
 穿刺針のサイズと先端形状を把握する.20G以上の太い穿刺針は直進性が良いが,臍帯穿刺や胎児胸腔穿刺などに用いる22G以下の針では通過組織正常や子宮収縮の影響を受けて刺入経路が彎曲しやすい.先端形状はおおまかにはBevel tipとCone tipがあり,直進性や角度による先端のエコーが異なる.超音波音場形状(ビームプロファイル)はスキャン方向にもスライス方向にも電子的フォーカシングや音響レンズが働いていることに注意する.穿刺針先端をうまく追従するためにはこれらの特性を理解しなければならない.
(2)穿刺のプランニング: 穿刺部位, 刺入経路, 解剖学的条件, リスクの認識
 子宮正面からの穿刺が最も安全で成功率が高くなる.穿刺対象物のサイズ,到達距離,刺入経路を勘案して穿刺部位を決定する.穿刺対象物の解剖学的拘束条件は難易度を左右する.固定されている対象よりも,羊水中に浮遊している臍帯血管などの穿刺はより難しいと認識する.胎盤は可及的に穿刺しないよう配慮する.母体や胎児の臓器損傷のリスクを認識し,リスク低減策を検討する.
(3)穿刺技術: 刺入角度, 刺入速度のトレーニング
 母体腹壁面への穿刺針の刺入角度は65-75°程度が経験上推奨される.より小さい角度では穿刺部近傍に超音波画像の死角が生じ,穿刺経路が長くなる.穿刺針先端をリアルタイムに追従するが,通過組織により速度にメリハリをつける.卵膜,胎児胸壁,臍帯血管壁などを刺入する際にはすばやく針を進める.浮遊している対象を穿刺するためにはある程度大きなストロークを与える.また穿刺によるモーメントや慣性を考慮する.実際の穿刺には予期せぬ状況が生じてくるが,行動決定にはOODAループ(Observe-Orient-Decide-Act)が有用なフレームワークとなる.
(4)(1)(2)(3)の統合によるアプローチ
 術者は眼で超音波画像を観察するが,あくまでも手技対象が胎児であることを常に認識しなければならない.穿刺(利き手)が主で画像はあくまでも従となる.すなわち安全で成功率が高い穿刺経路がまず決まり,それに合わせて画像を作成するスキル-Brain-Physical integrationが安全な穿刺手技には必要でありトレーニングを要する.穿刺は利き手でおこない,その精緻な操作を鍛えるのは当然だが,画像構成を担うnon-dominant handの役割も大切である.
(5)SimulationとDebriefing
 医学教育におけるSODOTO(See One, Do One, Teach One)は前世紀によく主張されていたメソッドであるが不完全で危険な一面もあり,教える側にとってもストレスが大きかった.現代ではSODOTOにSimulate One と Debrief One を挟み込んだ教育をおこなう.胎児インターベンションの経験の少ない術者に対してはDebriefingこそ肝要である.