Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・技を究める 腹部エコー
腹部エコー2 技を究める~肝臓~

(S498)

技を極める 見落とし例から見た肝スクリーニングの注意点

Points to make a note of screening ultrasound for the liver from cases those are overlooked

西田 睦, 小川 浩司, 清水 力

Mutsumi NISHIDA, Kouji OGAWA, Chikara SHIMIZU

1北海道大学病院検査・輸血部, 2北海道大学病院超音波センター, 3北海道大学病院消化器内科

1Clinical Laboratory and Transfusion of Medicine, Hokkaido University hospital, 2Diagnostic Center for Sonography, Hokkaido University Hospital, 3Gastroenterology and hepatology, Hokkaido Universiy Hospital

キーワード :

【背景】
超音波検査(US)は主観的な検査であり,被検者の条件や術者の技能に依存することが知られている.
【目的】
USで見落としたと考えられる肝腫瘤例について,関連する因子を抽出し,解決策を模索すること.
【対象・方法】
2008年1月から2017年12月までに当センターで腹部領域の超音波検査を施行した49,702件のうち,悪性腫瘍が疑われ,見落としと考えられる記録が確認できた肝腫瘤性病変12例を対象とした.使用装置は東芝Aplio XG, 500, Logiq E9, Phillips IU22, Epiq7, 日立Avius, 探触子は中心周波数帯3.5MHzコンベックス/マイクロコンベックス型, 6MHzコンベックス型, 9/7.5MHzリニア型を使用した.施行者は経験年数0-34年の臨床検査技師10名,放射線技師3名,研修医師3名
【結果】
症例は12例.1)男性5例.2)年齢中央値71歳(16-81歳).3)BMI中央値22.6(18-46.6).4)背景肝は肝硬変5例,慢性肝炎4例,NASH 1例,NAFLD1例,正常1例.5)臨床診断は肝細胞癌6例,肝内胆管癌2例,転移性肝癌1例,FNH-like lesion 2例, 肝内胆管結石1例.6)結節個数は単発9例.多発3例7)腫瘤存在部位はS8 4例,S7 2例, S5/8 1例, S4 1例,S2 1例,S3 1例, S1 1例,外側区1例.8)エコーレベルは低エコー7例,高エコー3例,やや高エコー1例,等から低エコー1例.9)発見契機はUSダブルチェック4例,CT 4例, US follow 3例, MRI 1例.10)最大径中央値17.5mm(11.5-59.8mm).11)施行者経験年数中央値3年(2ヶ月-8年),12)他所見に気を取られた 2例(新規に膵癌,他に経過観察している結節があった)
【考察】
限られた範囲の検索結果ではあるが見落としに関与する因子は1. 高齢,2. 背景に肝障害あり,3. 肝横隔膜直下や張り出した/上下径の短縮した外側区などの観察しにくい部位.4. 単発でサイズは2cm以下,5. 5年未満の施行者に多く, 6. 他所見に注意が向いた, などが考えられた.疾患は肝細胞癌が多く,性別, BMIなどには特徴的な傾向はなかった.解決策としては,USダブルチェックで指摘した結節は左・右側臥位などの体位変換,左肋間走査,マイクロコンベックスを使用することで描出可能であったため,背景に肝障害がある場合や観察不良部位があった場合には,積極的にこのような工夫を試みること.経験の浅い施行者はS8結節を見逃す傾向があったため,深吸気でまたはやや肋骨がかかる右肋弓下または右横走査,背側から見上げるような肋間走査へのアプローチで,肺のガスを避け,横隔膜を意識して描出する走査を指導すること,一つの大きな所見に惑わされずに他所見にも注意して施行することが重要と考えられた.
【結語】
USの肝腫瘤の見落とし例は,背景に肝障害がある2cm以下の肝細胞癌に多く,その対策には体位変換などを付加したより注意深い観察が必要と考えられた.