Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・技を究める 腹部エコー
腹部エコー2 技を究める~肝臓~

(S498)

超音波検査における肝臓描出の“技”

"Technique" in the scan of liver using ultrasonography

小川 眞広, 三浦 隆生, 平山 みどり, 松本 直樹, 中河原 浩史, 山本 敏樹, 渡邊 幸信, 森山 光彦, 石田 秀明, 長沼 裕子

Masahiro OGAWA, Takao MIURA, Midori HIRAYAMA, Naoki MATSUMOTO, Hiroshi NAKAGAWARA, Toshiki YAMAMOTO, Yukinobu WATANABE, Mitsuhiko MORIYAMA, Hideaki ISHIDA, Hiroko NAGANUMA

1日本大学病院消化器内科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3市立横手病院消化器内科

1Gastroenterology, Nihon University Hospital, 2Center of Ultrasound, Akita redcross hospital, 3Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
超音波検査における肝臓の評価能を上昇させるポイントとしては,肝臓の解剖学的な知識と肝疾患に対する病態の知識が必要である.言い換えると基本的な知識不足は超音波診断装置で描出された画像に対する評価の差として現れ,人が画像取得をする検査法であるために手技的な因子が医療情報の差として現れるということになる.当学会でも前者の知識に関するとは討論されるため,今回有用な医療情報としての画像を得るための手技的な工夫を“技”として発表する.
【プローブ操作法と走査部位】
まず,超音波画像を入手するためには超音波の送信・受信を行うプローブのパフォーマンスを最大限に発揮させることが最も重要と考えられる.本来であれば皮膚に垂直に置けば良いのであるが超音波検査の環境として好ましくない皮下脂肪,筋肉,内臓脂肪,肺,消化管のガスなどの存在があることである.時として画像の評価以前に勝負が決してしまうことがあるため,これらを避けて描出するための知識と技術が必要となる.特プローブは置くだけではなく,適度の圧迫と一断面だけではなく常にvolume dataを意識した扇動走査(以下tilting)が必要となるため,それを理解して走査を行うことが重要である.ここでは肝臓の描出に主に用いる正中走査(縦・横走査),肋骨弓下走査,肋間走査,についての技術的な工夫について発表する.さらに,B-modeの装置条件の設定以外にも血流解析や肝硬度測定などいくつかの手法がありこれらを解析方法の武器として使用する選択肢もある.
【正中走査】
ここではまずはじめの形態評価を行う部分であり非常に重要な断面である.肝縁の評価及び肝表面裏面の凹凸の評価などを行うが呼吸やプローブでの圧迫による硬さの評価も体感できる断面である.また周囲の臓器との関係,大循環系の血流評価も行う断面となる.ここでのポイントは呼吸を上手く使うこと,圧迫を腹・背方向だけではなくtiltingを用いて消化管ガスのコントロールを行うことである.
【右肋骨弓下走査】
この走査は触診感覚が最も活きる部位である.触診時の指の感覚が直接プローブに伝わり圧迫と回転の調整が可能とすること,プローブをあおる際に自分の手が邪魔にならないように抜き圧迫はプローブのみではなく手の甲も用いて面で押すこと,消化管ガスを圧排でよけることなどがポイントとなる.
【右肋間走査】
この走査では,肋骨と肺の空気を避けることが重要となる.正しい肋間にプローブ入れることが最も重要でそのためには指で肋間の位置を確認してゼリーをその部分に塗りその線に垂直にプローブをあてることが最も確実で綺麗な画像が得られる.この走査で力を入れすぎると上手く肋間に収まらないことも多いので力を抜くこともポイントで画面が決定し撮影の際に少しだけ力を入れるようにしている.
【まとめ】
特に技術的な面は文章や静止画では伝え難い部分も多く十分に意図が伝わらない可能性がある.また,自分自身“技”については日々試行錯誤を続けておりこれが完成形なわけではない.さらに実際の症例は各人が異なり装置も異なるためにここに述べたことが全例で一致するわけではないことは自覚しているつもりである.最後に,今回の発表はかなり主観的な要素が多いことをお詫びし,これを参考にして現状のさらに上を目指す人やさらに究極の“技”を完成させる礎となれれば幸いと思い発表する.