Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・技を究める 腹部エコー
腹部エコー1 技を究める~胆膵~

(S495)

超音波検査にて膵臓の見落としを減らすために

The way to scan the pancreas with ultrasonography

刑部 恵介, 市野 直浩, 西川 徹, 杉山 博子, 川部 直人, 橋本 千樹, 吉岡 健太郎

Keisuke OSAKABE, Naohiro ICHINO, Toru NISHIKAWA, Hiroko SUGIYAMA, Naoto KAWABE, Senjyu HASHIMOTO, Kentaro YOSHIOKA

1藤田保健衛生大学医療科学部臨床検査学科, 2藤田保健衛生大学病院臨床検査部, 3藤田保健衛生大学医学部肝胆膵内科

1Faculty of medical Technology, School of Health Sciences, Fujita Health University, 2Department of Clinical Laboratory, Fujita Health University Hospital, 3Department of Liver, Biliary Tract and Pancreas Diseases, School of Medicine, Fujita Health University

キーワード :

【はじめに】
膵臓を,超音波検査にて見落としを少なくするように観察するには,膵自体の構造と機能に加え,隣接する臓器などの解剖学的知識が必要である.それらが描出を妨げるようであれば“走査部位”,“体位”,“呼吸”を組み合わせながら“音響窓”を確保し膵臓を観察しなければならない.さらに膵臓に隣接する臓器や血管まで,しっかり観察できれば膵臓の端まで描出できた目安となる.
【膵臓の発生過程】
膵臓は,胎生4週に前腸・十二指腸原基に腹側膵原基と背側膵原基が相対して発生し発育する.胎生6週から内臓回転がはじまり,腹側膵原基は肝憩室から生じる原始総胆管と共に時計回転し,胎生7週には背側膵原基の下方に移動し融合する.背側膵原基は膵頭部前面と膵体尾部を形成し,腹側膵原基は膵頭部の後面(膵鉤部など)を主に形成する.腹側膵原基の主導管と,その上行枝と融合した部位より上流の背側膵原基の主導管が主膵管を形成し,主乳頭から膵液を排出する.融合部より乳頭側にある背側膵原基の主導管は副膵管となり副乳頭に開口する.
【膵臓の構造】
膵臓は十二指腸の内縁から脾門部にかけて“斜め”に横行する長さ15~20cm,厚さは頭部2.5cm,体尾部1.5~2.0cmの細長い臓器である.膵臓は頭部,体部,尾部に分けられるが,その区分方法が膵癌取扱い規約第7版(2016年)で変更になったので注意が必要である.膵頭部は上腸間膜静脈・門脈の左側縁と十二指腸内側縁に囲まれた部分とし,その頭部を除いた尾側膵を大動脈の左側縁を基準にして,十二指腸側を膵体部,脾臓側を膵尾部とする.また,膵頭部の中で上腸間膜静脈の背側部を膵鉤部と言う.なお,膵頭部は“上・下”,“左・右”方向にも大きいので注意が必要である.一般的に主膵管は脾静脈より下方(足側)に位置する.
【膵臓の走査方法】
膵臓の観察には部位別の“走査部位”に加え,“体位”を切り変えて行う必要がある.膵頭部では心窩部横走査や縦走査に加え,膵管や膵内胆管の走行に併せた右季肋部斜(縦)走査を行い,さらに左右の側臥位も組み合わせるとよい.膵体部では心窩部からの横走査や縦走査,膵尾部では心窩部からの横走査や縦走査斜走査に加え,左肋骨弓下走査を行い,さらに左右の側臥位も組み合わせると良い.また同じ心窩部縦走査でも膵臓と消化管の位置を踏まえて,探触子を当てる位置を変え“音響窓”を調節する必要がある.例えば膵頭部を描出する際に胃などが腹側に位置する場合,通常の心窩部よりやや左側から覗き込むように観察すると良い.なお,膵尾部の描出は背側近くから左肋間走査のアプローチがよい.最後に“呼吸”は膵臓が観察される位置で息止めすればよい.また,通常の安静換気下での観察も息止めによる腹壁の緊張が減るため観察しやすい.膵描出の目安としては,膵頭上部前面:胃十二指腸動脈,膵頭下部前面:十二指腸水平部・胃結腸静脈,膵右側:十二指腸下行脚,膵頭部背面:下大静脈,膵下縁:第一空腸動・静脈,膵鉤部~膵体部:十二指腸水平脚などがある.
【膵管癌の早期発見】
膵管癌の高危険群は膵管拡張(2.5mm以上)と5mm以上の嚢胞であり,そのためにも膵管径の正しい計測と膵臓を隈なく観察することが重要である.特に膵鉤部の膵管癌では主膵管拡張を伴わない事が多いため,しっかり観察する必要がある.さらに,膵管の不可逆的な狭窄に加え同部の低エコー域化(随伴膵炎)も重要な所見となる.
【おわりに】
膵臓は超音波の特徴上描出が難しい臓器である.しかし膵管癌発見には超音波検査が担う部分は大きいため,労を惜しまず検査に臨む必要がある.