Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・技を究める 心エコー
心エコー1 誤診を招かない計測を究める

(S485)

心機能計測におけるリテラシー

"Echocardiographic literacy" in estimating cardiac function

勝木 桂子

Keiko KATSUKI

大阪大学医学部附属病院医療技術部臨床検査部門

Clinical laboratory, Osaka University Hospital

キーワード :

【はじめに】
 「心機能計測」は,検者の数値データに対する「リテラシー」が最も生かされるところである.リテラシーとは,もともと「メディアリテラシー(メディアから受けとる大量の情報を取捨選択し,上手に利用する方法)」などで知られる言葉であるが,筆者は「数値に翻弄されないための知識と技量」と意訳する.
当セッションはじめの3演題で正確な計測法やコツを学び,そこで得たデータからどう考えるかが本演題のテーマである.
【計測項目】
 心機能計測において,「知りたいこと」と「必要な計測項目」は以下に集約される.右心機能については様々な検討がなされているが,いまだ確たる指標が定まっているとは言えないため,以下の項目を中心に考える.
①左室収縮機能
 左室駆出率
②左房圧
 左室流入血流,E/e’,肺静脈血流,左房容積係数など
③右房圧
 下大静脈径,呼吸性変動
④肺動脈圧
 三尖弁逆流血流速度,推定右房圧
 これらの中で最も解釈に苦慮するのが,「②左房圧の推定」であろう.これまで,2009年のASEガイドライン(文献1)が汎用されていたが,2016年に改訂された(文献2).改訂の意図は「これまでのガイドラインが複雑すぎるため,簡略化をはかる」とされているものの,簡略とは言い難い(図).また,適用不可となる疾患も多く,限界がある.
 例えば,E/e’には制約があり,僧帽弁輪部石灰化,僧帽弁狭窄症,僧帽弁置換術後・弁輪縫縮術後,局所左室壁運動異常例などは評価の対象外である.僧帽弁輪部石灰化・狭窄症・術後例では左室流入血流自体が高値を示すため,図のフローチャートにのせて考えることができない.
このようにガイドライン以前に症例の特徴を考える必要があり,明確に左房圧の高低が結論づけられない症例も多々ある.
【心機能評価において考えるポイント】
・前回値との比較
 心エコーは繰り返し検査ができる利点があり,「経時的変化」を追うのに有用である.左室のサイズや左室流入血流E/Aに変化がみられた場合,その原因となり得るもの(壁運動異常や弁逆流など)を検索する.
・矛盾を含むデータはないか?
 矛盾した数値を羅列している検査報告書を見る事はないだろうか?
どの項目がより信頼性が高いか,技術的エラーの可能性を含めて検討する必要がある.
参考文献
1)Nagueh SF, et al: J Am S Echocariogr 2009;22:107-133
2)Nagueh SF, et al:J Am S Echocardiography. 2016;29:277-314