橋本 修治

Shuji HASHIMOTO

国立循環器病研究センター臨床検査部

Department of Clinical laboratory, National cerebral and cardiovascular center

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ドプラ法で得られる波形は，隣接している心腔圧の変化でドプラ波形のパターンや流速の変化により，非侵襲的かつ迅速に心血行動態の諸指標が得られ，拡張能や血行動態の指標として評価されている．また，このドプラ法は現在のルーチン検査において必須の方法である．しかしながらドプラ法の原理を無視して装置の性能を十分に引き出さないと，正しい記録や計測，そしてその評価を行わなければ誤った情報提供をしかねない．ドプラゲインは血流表示の範囲に大きく影響するので常に注意が必要である．各種ドプラ法の適切なゲイン設定は，クラッタノイズを認める直前に設定する．ドプラ法は血流の方向と平行となるようにドプラビームを投入すると効率よく血流速波形の記録が可能となる．ドプラ入射角に伴う流速誤差は，角度が大きくなっていく毎に指数関数的に増加する影響が生じてしまうのでドプラビームと血流方向に角度が生じる場合は，入射角度を20°以内にすると誤差は6％以内となり臨床上問題とならない．パルスドプラ法では，サンプルボリュームと称する関心領域を目的部位に設定する必要がある．このサンプルボリュームの位置と大きさで，血流速波形が異なってくるので注意する．左室流入血流の場合，僧帽弁開放直前の弁尖先端部にサンプルボリュームを設定すれば良好な流入血流の記録が可能となる．心腔内の血流記録をするサンプルボリュームは，S/N比が最もよい2～3mmが望ましいとされている．ドプラ法のスペクトラムは縦軸に速度，横軸に時間情報を示し，パルスドプラ法や連続波ドプラ法では，計測する血流速度に応じてフィルタを設定する必要がある．波形計測の誤差を少なくするには，波形のピークを計測する際，速度レンジを調節して波形をできるだけ大きく表示して計測するほうがよい．カラードプラガイド下でサンプルボリュームを設定する際には，できるだけ呼吸抑制をした断層上で位置が安定したのを確認して，ドプラスペクトラム表示にするとよい．また波形の良し悪しを問わず，描出されたシグナルをむやみに計測することは誤診の可能性となる．心エコーで代表するドプラ波形としては左室流入血流，左室駆出血流，肺動脈駆出血流，肺静脈血流，腹部大動脈血流，僧帽弁輪運動速度の記録を行うことで，心機能をより客観的に評価することが可能となる．この場で今一度，各種ドプラ計測を極めるための再確認をしていただきたい．