Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 運動器
シンポジウム 運動器2 はじめの一歩~動きで見る運動器の機能解剖~

(S471)

エコーで診る膝関節疾患

Ultrasonography of the knee disorder

中瀬 順介, 高田 泰史, 下崎 研吾, 浅井 一希, 土屋 弘行

Junsuke NAKASE, Yasushi TAKATA, Kengo SHIMOZAKI, Kazuki ASAI, Hiroyuki TSUCHIYA

金沢大学大学院機能再建学講座(整形外科)

Department of Orthopaedic Surgery, Graduate School of Medical Sciences, Kanazawa University

キーワード :

膝関節疾患のなかで単純X線写真が補助診断に役立つものは意外に少なく,我々膝関節外科医は多くの情報をMRIに依存している.MRIは膝関節内・外からたくさんの情報を供給してくれ,多くの膝関節疾患の診断に有効ではあるが,待機時間や撮影時間,費用の問題などからすべての膝関節疾患に有用な検査とはいえない.一方,エコーは動きを観察できるばかりでなく,組織の血流をリアルタイムで確認することができる.本シンポジウムでは,診断にエコーが有用な膝関節疾患について報告する.
早期変形性膝関節症
変形性膝関節症の補助診断は単純X線写真で行われることが多く,進行度分類は1957年に発表されたKellgren-Laurence分類を用いるのがいまだに一般的である.この分類はおもに,関節軟骨の減少程度と骨棘の形成程度により重症度分類を行うもので,早期変形性膝関節症では単純X線写真上の変化は少ない.また,X線写真上の初期の関節裂隙の狭小化は関節軟骨の菲薄化ではなく,半月の逸脱に影響されていると考えられている.荷重時および膝関節屈伸時の半月の逸脱を動的に評価するにはエコーが適しており,早期変形性関節症の診断の手掛かりとなる可能性があり,我々が行っている臨床研究に文献的考察を加えて紹介する.
膝前方部痛を呈するスポーツ障害の診断にエコーは非常に有用であり,なかでも疼痛の指標としてドプラ画像を利用している疾患を紹介する.
膝蓋腱症
膝蓋腱症は膝伸展機構のオーバーユースによる障害である.好発部位は近位深層やや内側よりである.正常膝蓋腱は線状高エコー像の層状配列を示す.膝蓋腱症では膝蓋腱が肥大,低輝度化し,線状高エコー像が開大または消失し,ドプラ画像で,病変部周囲に血流シグナルが増加する.
Osgood-Schlatter病
大腿四頭筋の牽引による脛骨粗面部2次骨化中心の部分的な裂離が病気の本態であるが,浅および深膝蓋下包水腫や膝蓋腱の低輝度領域やドプラ画像で,膝蓋下脂肪体や膝蓋腱周囲に血流シグナルが増加することもある.
遺残性Osgood-Schlatter病
Osgood-Schlatter病で裂離した2次骨化中心の骨化が完了し,分離骨片となり,骨片と脛骨粗面の間に非生理的な摩擦が生じる.摩擦により生じた滑液包が深膝蓋下滑液包と連続し,深膝蓋下滑液包炎を呈する.ドプラ画像で深膝蓋下包に血流シグナルを認める.
Sinding-Larsen-Johansson病
膝蓋骨下極(膝蓋腱付着部)に不規則な骨化像を呈する.膝蓋骨の骨化障害説が有力であり,膝蓋骨下極骨輪郭の不整像が特徴的であり,ドプラ画像では膝蓋骨あるいは膝蓋腱部に血流シグナルを認める.
有痛性分裂膝蓋骨
有痛性分裂膝蓋骨では膝蓋骨本体と1~数個の骨片にわかれているもののなかで,その分裂部位に疼痛を有するものをいう.有痛性分裂膝蓋骨では分離部にドプラ画像で血流シグナルを認めることが多い.